韓国の都市名でソウルだけカタカナなのはなぜ?漢字表記されない理由を解説

釜山(プサン)や仁川(インチョン)といった韓国の地名は漢字で表記できるのに、首都「ソウル」だけはなぜかカタカナ。その理由は、言語の歴史や文化に深く関係しています。
今回は、ソウルだけが漢字表記されない理由をわかりやすく解説します。
なぜソウルだけカタカナ?他の都市は漢字なのに…
釜山(プサン)、仁川(インチョン)、板門店(パンムンジョム)といった韓国の主要都市は、いずれも日本語で漢字表記が可能です。
一方、韓国の首都である「ソウル」だけは、どの新聞や地図を見てもカタカナ表記。
不思議に思ったことはありませんか? この違いは、韓国語における「固有語」と「漢字語」の分類にあります。
日本語にもある「固有語」と「漢字語」
まず、日本語を例に説明しましょう。
日本語の語彙は大きく分けて以下の3種類に分類されます。
- 和語(やまとことば):日本固有の言葉(例:やま、かわ、はしる)
- 漢語:中国から伝わった語(例:山地、河川、疾走)
- 外来語:欧米などからの借用語(例:コンピュータ、バナナ)
「やま」は和語ですが、漢字で「山」と書けるのは、漢字に訓読み(日本語独自の読み方)があるからです。
韓国語にも「固有語」と「漢字語」がある
韓国語(朝鮮語)も日本語と同様に、語彙は次の3種類に分けられます。
- 固有語:朝鮮半島で古くから使われていた言葉
- 漢字語:中国から伝わった言葉(朝鮮式音読み)
- 外来語:英語などから取り入れられた語彙
朝鮮半島は地理的に中国に近く、古くから強い文化的影響を受けていたため、韓国語の語彙の6〜7割が漢字語だとも言われています。
ただし、現代の韓国語はハングル表記が主流で、たとえ漢字語であっても普段は漢字で書かれないのが一般的です。
韓国語の固有語には「訓読み」がない
日本語には「山=やま」のように、意味と音を対応させる訓読みがあります。しかし、韓国語にはこの訓読みが存在しません。
つまり、固有語は漢字に置き換えることができないのです。
これが、「ソウル」がカタカナ表記される理由につながってきます。
ソウルは固有語だった!だから漢字にできない
「ソウル」は朝鮮語の固有語で、「都」や「首都」を意味する一般名詞としても使われてきました。
歴史的には、ソウルは王朝や統治者によって以下のようにさまざまな名前で呼ばれていました。
- 漢陽(ハニャン)
- 漢城(ハンソン)
- 京城(ケイジョウ)
- 京都(キョンド)など
日韓併合時代には「京城」が公式名称とされていましたが、第二次世界大戦後、韓国が日本から独立したのを機に、固有語である「ソウル」が正式名称に採用されたのです。
その結果、「ソウル」は漢字では表せない名称として、カタカナ表記が定着しました。
他の都市名が漢字で表せる理由とは?
ではなぜ、釜山や仁川といった他の都市は漢字表記できるのでしょうか?
以下のような理由が考えられます。
- 地名が漢字語であることが多い:新しい地名は意味のある漢字を組み合わせて作られる
- 行政や学術で漢文が使われていた歴史:20世紀初頭まで、行政文書の多くは漢文で記されていた
- 発音と漢字の対応が明確だった:漢字語であれば、ハングル・漢字の相互対応が可能だった
つまり、これらの地名は元々が漢字語であったため、日本語でも自然に漢字表記されているのです。
中国語では「首尔(首爾)」と表記されている
漢字文化圏である中国では、以前はソウルを「漢城」と呼んでいました。しかしこれは歴史的な名称であり、実際の発音とも一致していませんでした。
そのため2005年、中国政府は表記を「首尔(簡体字)/首爾(繁体字)」へと変更。この名称はソウルの発音に近い音訳となっています。
もし「どうしても漢字で書きたい!」という場合は、この「首尔」または「首爾」を使ってみるのもひとつの方法です。
おわりに|ソウルのカタカナ表記には深い意味がある
ソウルだけがカタカナで表記されるのは、偶然ではなく言語的・歴史的な理由に裏付けられたものです。
固有語であること、訓読みが存在しない韓国語の構造、そして近代以降の政治的な経緯――それらが重なった結果として、「ソウル」はカタカナで表され続けているのです。







