富士山が「文化遺産」に登録された理由とは?自然遺産じゃないの?

「富士山は日本一高い山だから自然遺産だろう」と思っている方はいませんか?
実は富士山は 文化遺産 として世界遺産に登録されています。この記事では、富士山が文化遺産になった理由や、その背景にある自然との関わりを紹介します。
世界遺産の登録基準とは?
世界遺産は「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」の3つに分けられます。
- (i)~(vi) → 文化遺産の基準
- (vii)~(x) → 自然遺産の基準
- 両方を満たせば複合遺産
また、各国は候補を暫定リストに登録 → 国が推薦書を作成 → ユネスコの諮問機関が評価 → 世界遺産委員会が決定、という流れで登録されます。
富士山に認められた基準は文化遺産だけ
富士山に認められたのは文化遺産の基準 (iii)信仰との結びつき と (vi)芸術への影響 の2つです。
(iii)信仰との結びつき
富士山は古来より噴火を繰り返し、人々は畏怖の念を抱きました。そのため、浅間大社などの神社を建て、富士山信仰が広がりました。この信仰は現代の登山文化や自然への感謝の思想にも受け継がれています。
(vi)芸術への影響
葛飾北斎の浮世絵『富嶽三十六景』など、富士山は芸術の題材としても大きな影響を与えました。西洋の画家モネや音楽家ドビュッシーにも影響を及ぼし、日本文化の象徴として世界に知られる存在になりました。
実は自然遺産を目指していた?
もともと富士山は自然遺産の候補地でした。2003年の検討会でも19の候補のひとつに選ばれていましたが、
- ゴミや環境保護の課題が多かった
- 他に優先度の高い自然遺産候補があった
といった理由から見送られました。
その後、「文化的価値」で登録を目指す動きにシフトしていったのです。
文化的価値の背景には自然がある
富士山信仰や浮世絵などの芸術は、富士山の噴火や独特の姿といった自然があってこそ生まれたものです。
つまり、文化的価値は自然を土台にして成立している といえます。
しかし世界遺産制度は「文化」と「自然」を分けて評価する仕組みのため、文化遺産としての登録に落ち着きました。
なぜ複合遺産にならなかったの?
「景観美」など自然遺産の基準(vii)も当てはまりそうですが、
- 自然遺産として推薦するなら環境省や林野庁との連携が必要
- 登録がさらに先延ばしになる懸念
があり、文化庁が中心となって文化遺産のみで登録を進めました。
まとめ
- 富士山は「文化遺産」として登録(基準iii・vi)
- 信仰や芸術への影響が評価された
- もとは自然遺産候補だったが、課題が多く断念
- 自然の存在が文化的価値を支えている
世界遺産の登録区分はあくまで制度上のもので、富士山の価値のすべてを表しているわけではありません。
文化と自然の両方の魅力を意識して見ると、富士山がもっと特別な存在に感じられるでしょう。