蚊に刺されても痛くない理由とは?針の細さと唾液の秘密を解説

夏になると誰もが悩まされる蚊の虫刺され。かゆみは強烈なのに、刺されている瞬間はほとんど痛みを感じません。これは偶然ではなく、蚊が生き延びるための巧みな戦略なのです。この記事では、蚊に刺されても痛くない理由を2つの視点から解説し、医療への応用についても紹介します。
理由① 針が極めて細い
蚊の口針は6本からなり、直径は約0.06~0.07mmと非常に細い構造をしています。比較すると、インフルエンザワクチンなどで使う注射針は0.5mm以上。蚊の針の細さは注射針の10分の1以下です。
皮膚には「痛点」と呼ばれる感覚点が散らばっており、針が痛点に当たると痛みを感じます。細ければ細いほど痛点を避けられるため、蚊の針は痛みを与えにくいのです。
理由② 唾液に痛み止めの作用がある
2021年に日本の研究チームが発表した論文によると、蚊の唾液にはTRPV1やTRPA1と呼ばれる痛覚センサーの働きを抑える物質が含まれている可能性があります。
これにより、皮膚が針で刺激されても痛みを感じにくくなるのです。興味深いことに、マウスやヒトの唾液にも似た作用が報告されており、動物が傷口をなめる行動の一因と考えられています。
ちなみに、唐辛子の辛みはTRPV1を、わさびの刺激はTRPA1を活性化させることで生じます。つまり、痛みと辛みは同じ感覚経路を利用しているのです。
蚊の針が医療に役立つ?
蚊が持つ「痛みを与えない仕組み」は医療研究にも応用されています。蚊の口針を模倣した「痛くない注射針」の開発が進められており、将来的には予防接種や採血の苦痛を大幅に減らせる可能性があります。
自然界の工夫を人間の技術に活かすこの分野は「バイオミメティクス」と呼ばれ、注目を集めています。
まとめ
蚊に刺されても痛くないのは、
- 針が非常に細く痛点を避けやすいこと
- 唾液に痛みを抑える成分が含まれていること
が理由です。
厄介な存在の蚊ですが、その仕組みは科学や医療のヒントにもなっています。次に蚊に刺されたとき、彼らの進化した戦略に少しだけ感心してみるのも面白いかもしれません。