なぜ非常口のピクトグラムは緑色なのか?国際基準と視認性の理由

駅やビル、映画館など、どこへ行っても必ず目にする「非常口」のピクトグラム。
走る人のシルエットと緑色の背景は、もはや世界共通の“安全のサイン”です。
しかし、なぜこのマークが緑色で描かれているのでしょうか?
その理由には、人間の視覚特性と国際的な安全基準が深く関係しています。
緑は「安全」を示す世界共通の色
まず押さえておきたいのが、「緑=安全」という国際的な色の意味です。
ISO(国際標準化機構)やJIS(日本工業規格)では、
安全や避難に関するサインは「緑」で統一するよう定められています。
これは、世界中で同じ意味として認識されるようにするため。
たとえば、
- 赤=危険・禁止
- 黄=注意
- 青=指示
- 緑=安全・避難経路
というように、色そのものに「意味」が割り当てられているのです。
そのため、非常口マークには安全の象徴である緑が使われています。
なぜ赤ではなく緑?「落ち着き」と「視認性」の違い
非常口マークに赤を使うと目立ちはしますが、
赤は「危険・停止・火災」などの緊張を促す色として使われています。
火災報知器や消火器、非常ベルなどが赤いのはそのためです。
一方、非常口は「逃げる」「助かる」ための場所。
パニックを起こさず落ち着いて向かうべき方向を示すため、
刺激の少ない緑が最適とされています。
また、人間の目は暗闇で緑色を最も識別しやすいという特性があります。
夜間や煙の中でも視認しやすいため、
避難時にすぐ見つけられる色として理想的なのです。
ピクトグラムのデザインにも安全思想がある
現在の「走る人」のデザインは、1979年に太田幸夫氏らが開発したもの。
このデザインは日本発祥であり、のちに国際標準(ISO 7010)として採用されました。
つまり、世界の非常口マークは日本生まれなのです。
このシンボルには、
- 左向き=出口方向の誘導
- 開かれたドア=脱出経路の象徴
- 人物のシルエット=“行動”を促す意図
という、シンプルながらも緊急時に直感的に理解できる設計思想が込められています。
国ごとに異なる色?一部では「赤い非常口」も存在
日本を含む多くの国では「緑」が採用されていますが、
アメリカやカナダなど一部地域では「赤いEXITサイン」が使われています。
これは、アメリカで「赤=非常・警告」の認識が強く、
危険時に注意を引く色としての“赤”が好まれたためです。
ただし現在では、国際的な場や多言語対応施設では
緑のピクトグラムが併設されるケースも増えています。
まとめ:非常口の緑は「安心して逃げられる色」
非常口のピクトグラムが緑色なのは、
- 国際基準で「安全」を意味する色だから
- 暗闇や煙の中でも最も見えやすいから
- 緊張をあおらず落ち着いて避難できるから
という、科学と心理の両面からの安全設計に基づいています。
見慣れた緑のマークには、
「命を守るための世界共通言語」という深い意味が隠されているのです。