なぜ赤信号は“赤”、非常停止ボタンも“赤”なのか?色彩と安全心理の科学
 
										街を歩けば、信号機・非常停止ボタン・火災報知器──どれも赤色が使われています。
世界中で「赤=止まれ」「危険」「注意」という認識が共通しているのは、なぜでしょうか?
それは単なる慣習ではなく、人間の視覚と心理に基づく安全設計の結果なのです。
赤は「最も目に入りやすい色」
赤は可視光線の中で最も波長が長い色(約620〜750nm)です。
波長が長い光は大気中で散乱しにくく、
遠くからでも鮮明に見えるという特性を持っています。
たとえば、夕日が赤く見えるのもこの性質によるもの。
青や緑は散乱してしまうのに対し、赤は大気を貫いて届くため、
視認性が高く、遠距離からでも目立つ色として最適なのです。
そのため、交通信号・非常灯・警告灯といった
「とにかく早く気づかせたい」対象には赤が使われます。
人間の心理的にも“赤=危険”を直感する
赤は視覚だけでなく、生理的反応を引き起こす色でもあります。
人間は赤を見ると、
- 心拍数が上がる
- 血圧が上昇する
- 注意力が高まる
 といった反応を示します。
これは、赤が血液・炎・警告など「生命に関わる刺激」と結びついているため。
本能的に「危険」「注意」「ストップ」を連想させ、
行動を抑制する色として働くのです。
そのため、赤信号を見た瞬間に“止まらなければ”と感じるのは、
訓練ではなく生理的な反応に近いものといえます。
信号の「赤・黄・青」はコントラストの最適化
信号機では赤のほかに黄(注意)・青(進行)が使われていますが、
この組み合わせにも科学的な理由があります。
赤は最も長い波長、青は最も短い波長を持ち、
両者の差が大きいことで、視覚的に明確な区別がつきやすくなります。
つまり、色覚に多少の個人差があっても、
「赤=止まれ」「青=進め」を直感的に区別できる配色なのです。
「赤=危険」は国際的に共通の安全規格
赤が危険色として使われるのは、日本だけではありません。
国際的にも安全規格で統一されています。
- ISO 3864(安全色の国際基準)
 → 赤は「禁止・停止・危険」の意味を持つ
- JIS Z9101(日本の安全色)
 → 赤=禁止・危険・火気
- OSHA(米国労働安全衛生局)
 → 赤=火災・緊急停止・危険物
これらの基準により、非常停止ボタン・火災報知器・消火器など、
世界中で赤が共通の“ストップシグナル”として使われているのです。
非常停止ボタンや消火器も「赤」の合理設計
非常停止ボタンは緊急時に即座に押される必要があります。
赤色は背景(グレーや白)とのコントラストが高く、
一瞬で見つけやすい。
さらに、ボタン自体の形(大きく・丸く)も「押しやすさ」を強調し、
“視覚+触覚”で危険を訴える設計になっています。
赤色は、単に目立つだけでなく、即行動を促す色でもあるのです。
赤が「禁止」や「ストップ」に使われる理由まとめ
| 用途 | 意味 | 理由 | 
|---|---|---|
| 赤信号 | 停止 | 遠くから見える・注意喚起効果 | 
| 非常停止ボタン | 緊急対応 | 一瞬で視認でき、押す行動を誘導 | 
| 消火器・警報灯 | 危険・火気 | 火のイメージと一致、国際規格で統一 | 
| 立入禁止マーク | 禁止 | 本能的な警戒反応を引き出す | 
まとめ:赤は“人を止めるために最適な色”
赤信号や非常停止ボタンが赤いのは、
- 波長が長く、遠くからでも最も目立つ
- 人間の心理的・生理的に「危険」「緊張」を感じさせる
- 国際的安全基準で危険・停止色と定められている
という科学と心理の両面から裏づけられた合理設計によるものです。
つまり「赤」は単なる色ではなく、
命を守るために選ばれた“行動の信号”なのです。

 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											