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豆知識

なぜスーツの袖に“ボタン”が付いているのか?軍服に由来する歴史的な機能の名残

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スーツの袖口には、ほとんどのジャケットで小さなボタンが並んでいます。
中には本当に開閉できる“本切羽(ほんせっぱ)”もありますが、
多くの人は「ただの飾りでは?」と思っているでしょう。
実はこのボタン、単なる装飾ではなく、歴史的な機能の名残なのです。

起源は「軍服」──袖をまくって戦場で使うため

スーツの原型は19世紀のヨーロッパ、特にイギリス軍の軍服にあります。
当時の士官用ジャケットは、戦場や行軍の際に袖をまくれるよう、
袖口にボタンを付けて開閉できる構造になっていました。

医療行為や整備、野営などで手を汚す場面も多く、
袖をまくることができれば実用的だったのです。
この「袖を開けられるデザイン」が、現代のスーツの袖ボタンの起源となりました。

「本切羽」は今も残る伝統技術

現在のスーツでも、一部の高級仕立てでは本切羽(Functional Cuffs)と呼ばれる仕様があります。
これは実際にボタンを外して袖口を開けられる構造

量産スーツでは飾りボタンが多いものの、
オーダーメイドや高級ブランドでは、伝統的な仕立ての証として残されています。

特に英国では「このスーツは職人が手で仕立てた証」とされ、
袖ボタンをひとつ外して着るのが粋なこだわりのサインとされることもあります。

「袖のボタン」は汚れ防止のためという説も

もうひとつ有名なのが、
「兵士が袖で鼻を拭くのを防ぐために付けられた」という逸話です。
18世紀、ナポレオンが部下のだらしない仕草を見かねて、
「袖に金属ボタンを付けて拭けなくしてしまえ」と命じたという伝説があります。

真偽は定かではありませんが、
“袖の清潔さ”を重んじるヨーロッパの文化を象徴する説として知られています。

数と配置にも意味がある

袖ボタンの数は、一般的に3〜4個が主流。
英国調(ブリティッシュ)では4つ並べることが多く、
アメリカ調(アイビー)では3つ、
イタリアではやや間隔を広く取るなど、国やスタイルで微妙に異なります

また、ボタンを袖のラインに沿って斜めに配置する「キッシングボタン(重ねボタン)」は、
ヨーロッパで格式高いスタイルとされています。
これは「職人がボタンホールを正確に縫える腕の証」でもあるのです。

今では“装飾”と“ステータス”の役割に

現代のスーツでは、袖のボタンを開ける機会はほとんどありません。
しかし、

  • 歴史的な軍服の構造を受け継いだデザインであること
  • 本切羽仕様は高級スーツの象徴であること
    から、伝統と格式を感じさせるディテールとして残されているのです。

つまり、袖ボタンは「実用の名残」でありながら、
今ではスーツの完成度と品格を示すサインへと進化しています。

まとめ:袖のボタンは“機能から文化へ”変化した遺産

スーツの袖にボタンが付いているのは、

  • 軍服時代の“袖を開く機能”の名残
  • 清潔・礼儀を象徴する文化的背景
  • 仕立て職人の技術を示す証

といった理由によるものです。

つまり袖ボタンは、ただの飾りではなく、
機能から生まれ、格式として残った歴史のデザイン
スーツを着るとき、その小さなボタンにも100年以上の文化の重みが宿っているのです。

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