なぜ映画は“24fps”が標準なのか?フィルムと残像が生む“映画らしさ”の理由
 
										私たちが映画館で観ている映像は、実は1秒間に24枚の静止画でできています。
テレビやスマートフォンの動画が60fpsなどの高フレームレート化する中、
なぜ映画だけは今も「24fps」が標準なのでしょうか?
その答えは、技術・コスト・映像表現の歴史にあります。
フレームレート(fps)とは?
「fps」とは “frames per second” の略で、
1秒間に何枚の静止画を表示するかを示す単位です。
- 24fps → 1秒に24枚
- 30fps → 1秒に30枚
- 60fps → 1秒に60枚
fpsが高いほど動きが滑らかになりますが、
同時にデータ量(またはフィルム使用量)も増えるというトレードオフがあります。
映画の24fpsは“フィルムと音声”の妥協点だった
映画が誕生した19世紀末、サイレント映画(無声映画)は
16〜20fps程度で撮影・上映されていました。
この頃は音声がなく、カメラの手回し速度にもばらつきがあったため、
作品によってコマ数はバラバラでした。
しかし1920年代に入ると、「トーキー映画(音声付き映画)」が登場。
音声をフィルムに直接記録する方式では、一定速度で再生しないと音が歪むという問題が発生しました。
その結果、
● 滑らかな動き
● 音声の安定再生
● フィルムコストの抑制
この3点をバランス良く満たす速度として採用されたのが、24fpsだったのです。
フィルムの経済的な理由も大きかった
当時の映画は、35mmフィルムを1秒間に24コマ使う仕様。
もし30fpsや60fpsにした場合、使用するフィルム量が1.3〜2.5倍に増え、
制作・現像コストが爆発的に上がってしまいます。
映画は数千メートルものフィルムを使うため、
1コマあたりの差でも経費が大きく変わります。
そのため24fpsは「映像品質」と「費用」の最適点だったのです。
残像効果によって“滑らかに見える”
人間の目は、コマとコマの間が完全に切れていても、
短時間なら前の映像が残像として残るという性質があります。
これを「残像効果(Persistence of Vision)」と呼び、
24fpsでもコマ間の隙間を感じにくく、滑らかに動いているように錯覚します。
つまり、24fpsは「人間の目が自然に連続映像と認識できる最低限の速度」と言えるのです。
“映画らしさ”を作る24fpsの独特な質感
24fpsは、テレビやスマホ動画(30〜60fps)よりも
わずかにカクついた・なめらかすぎない動きになります。
この独特のリズムが、私たちが感じる
「映画っぽい」「シネマティックな雰囲気」
の正体です。
つまり、24fpsは単なる技術的な基準ではなく、
“映画の質感”そのものを形づくる表現要素でもあるのです。
ハイフレームレート映画(HFR)も登場している
近年では、技術の進歩によって48fpsや60fpsの映画も登場しています。
代表的なのは――
- 『ホビット』(48fps)
- 『ジェミニマン』(120fps)
これらは動きが非常に滑らかで臨場感が高い一方、
「リアルすぎて映画っぽくない」
と感じる人も少なくありません。
結果的に、24fpsは“芸術表現としての心地よい非現実感”を保つ基準として、
現在でも映画業界の標準であり続けています。
まとめ:24fpsは“歴史と感性の落としどころ”
映画が24fpsで作られているのは、
- トーキー映画時代に音声再生を安定させるため
- フィルムのコストを抑えるため
- 残像効果で自然に見える最適速度だったため
- そして、24fps特有の「映画らしい質感」を維持するため
という技術と表現の両立から生まれた標準です。
つまり、24fpsは単なる数字ではなく、
「人の感覚と歴史が選んだ映画のリズム」なのです。

 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											