なぜ乾電池は“直列”で使うのか?電圧を高めるための基本原理と電流の仕組み
 
										リモコンや懐中電灯など、多くの電池製品では乾電池を2本、3本と直列につないで使います。
なぜ1本ではなく、わざわざ複数本をつなぐ必要があるのでしょうか?
実はその理由は、電圧(ボルト)と電流(アンペア)という2つの電気の性質にあります。
この記事では、乾電池を直列で使う仕組みと、並列接続との違いをわかりやすく解説します。
電圧と電流の違いをまず整理しよう
電気の基本を理解するには、「電圧」と「電流」を区別することが大切です。
| 用語 | 意味 | たとえ | 
|---|---|---|
| 電圧(V) | 電気を押し出す力(エネルギーの高さ) | 水道の水圧 | 
| 電流(A) | 実際に流れる電気の量 | 水の流量 | 
つまり、電圧が高いほど電気を強く押し出す力が強くなり、電流は回路全体の抵抗によって決まるという関係です。
理由①:電圧を高めないと装置が動かない
乾電池1本の電圧はおよそ1.5V(ボルト)です。
しかし、多くの電子機器は2V以上の電圧を必要とします。
たとえば:
- 懐中電灯:3V(=1.5V×2本)
- おもちゃ:4.5V(=1.5V×3本)
- 小型モーター:6V前後
このように、機器の設計電圧に合わせて乾電池を直列(+端子と−端子を交互につなぐ)ことで、
電圧を加算していくのです。
直列にすると、
1.5V × 3本 = 4.5V
となり、電圧が足し算のように増えるのが特徴です。
理由②:電流(電気の量)は変わらない
一方で、直列接続では電流は増えません。
各電池に流れる電流は同じで、電圧だけが合計される仕組みです。
たとえば、1.5Vの電池を3本直列につなぐと、
- 電圧:4.5V
- 電流:各電池で同じ値(増えない)
となります。
この特性を利用し、電圧を上げつつも電流は安全範囲に保つことで、
機器を適正なパワーで動かすことができるのです。
理由③:モーターやLEDを“動かす力”が必要だから
電気製品の中には、一定以上の電圧がないと動かない部品があります。
代表的なのがモーターやLED(発光ダイオード)です。
- モーターは、コイルに電流を流して磁界を作る構造
 → 電圧が低いと、磁力が弱くなり回転しない
- LEDは、一定の電圧を超えないと光らない“順方向電圧”を持つ
 → 電圧が足りないと点灯しない
このように「動かす力(電圧)」を上げるために、直列接続が必要になるのです。
並列接続との違い:電流量を増やす方式
乾電池を並列(+同士、−同士をつなぐ)にすると、電圧は1本分のまま変わりません。
その代わり、電流の供給量(持続力)が増えるのが特徴です。
| 接続方法 | 電圧 | 電流(持続時間) | 主な用途 | 
|---|---|---|---|
| 直列 | 足し算される | 変わらない | 電圧を上げたいとき(モーター・ライト) | 
| 並列 | 変わらない | 合計される | 長時間使いたいとき(時計・センサー) | 
たとえば、1.5V電池を2本並列にすると、
電圧は1.5Vのままですが、電流を2倍近く供給できるため、電池が長持ちします。
理由④:複数電池を組み合わせることで“両立”も可能
実際の電池パックでは、
直列+並列を組み合わせて電圧と電流の両方を調整している場合もあります。
たとえば、ノートパソコンや電動工具のリチウムイオン電池では、
- 直列で電圧を上げ
- 並列で電流容量(稼働時間)を増やす
という複雑な設計を採用しています。
つまり、「直列」は電圧を作り、「並列」は持久力を作る――この2つをうまく使い分けているのです。
まとめ:直列は“押し出す力”を足し合わせる仕組み
乾電池を直列で使うのは、
- 電圧(押し出す力)を合算して必要なパワーを得るため
- 機器が動作する最低電圧を確保するため
- 電流量を変えずに効率よくエネルギーを供給するため
という、電気の基本原理に基づいた設計です。
直列は“力を強める”、並列は“長く持たせる”。
この単純な法則こそ、電池の接続構造に隠れた最も合理的なエネルギー設計なのです。

 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											