なぜ歯磨き粉のチューブに“しま模様”が出るのか?ストライプ充填の科学と構造設計
 
										歯磨き粉をチューブから押し出すと、赤・青・白のしま模様がきれいに並んで出てきます。
中で混ざっているように見えて、実際は不思議と混ざらない。
いったいどんな仕組みで、あの模様は保たれているのでしょうか?
この記事では、「ストライプ充填」と呼ばれる技術の構造と原理を、やさしく解説します。
理由①:チューブの中は“3層構造”になっている
多くのしま模様入り歯磨き粉は、内部が複数の部屋に分かれた構造になっています。
一般的には、
- 白いベースペースト(主成分)
- 赤・青などのカラーペースト(着色成分)
 の2〜3種類を別々の通路に充填しています。
チューブを押すと、それぞれのペーストが同時に押し出され、
出口で層状に並んで合流することで“しま模様”が形成されます。
つまり、チューブの中では混ざっておらず、出口で合流する瞬間に模様が作られるのです。
理由②:ノズルに“ストライプ充填用の仕切り”がある
歯磨き粉のしま模様を作る最重要部分が、ノズル(口の部分)です。
ノズルの内側には、透明では見えないほどの細い仕切り構造が組み込まれています。
その構造は次のような仕組みです:
- 中央の大きな穴から白いペーストが出る
- 外側の小さな穴(数ヶ所)から着色ペーストが出る
- 両者が出口付近で接触し、表面にしま模様を形成
これにより、押し出される歯磨き粉の外側だけがカラー層になり、内部は白いままになります。
つまり、模様は“表面プリント”のような構造で作られているのです。
理由③:物理的に“混ざらない”粘性設計
「押し出したら混ざってしまうのでは?」と思うかもしれません。
しかし、歯磨き粉のペーストは非常に粘性が高く、流体として混ざりにくい特性を持っています。
たとえば:
- チューブ内では動きが遅く、拡散しにくい
- カラー層と白層の間にわずかな粘度差をつけてある
- 着色部分の比重を少し高くして、流れ方を安定化
このように設計されているため、押し出されても層が崩れず、表面の模様が維持されたまま出てくるのです。
理由④:充填工程でも“模様のズレ”を防ぐ工夫がある
工場では、歯磨き粉をチューブに充填する際に、
あらかじめ複数のペーストを同時に注入する「ストライプ充填機」という装置を使います。
- 白いベースを中央から注入
- カラーを外周部から注入
- それぞれの圧力・温度・粘度を精密制御
この3要素を調整することで、どの角度で押し出しても常に均一な模様が出るように設計されています。
つまり、1本1本のチューブの中に、完璧なバランスの流体構造が作られているのです。
理由⑤:デザインだけでなく“心理効果”もある
しま模様には、単なるデザイン以上の効果があります。
- 赤:爽快感・口臭ケア・殺菌イメージ
- 青:清涼感・ミント感
- 白:清潔・歯の輝き
といったように、色で機能を表現するマーケティング効果があります。
特に子ども向け歯磨き粉では、カラフルな見た目で「楽しく使える」印象を与えるために、
ストライプ模様が積極的に採用されています。
理由⑥:中身が減っても“模様が変わらない”のはなぜ?
チューブの中身が半分になっても、模様のパターンはほとんど変化しません。
これは、ペーストがチューブ全体に均一に配置されているためです。
チューブを押すとき、
白とカラーが常に同じ比率・同じ圧力で押し出されるよう設計されており、
最後の一滴まで模様が崩れないように作られています。
まさに、「模様が出る」のではなく「模様を維持したまま出す」ための技術なのです。
まとめ:しま模様は“デザイン”ではなく“流体工学の成果”
歯磨き粉のチューブからしま模様が出るのは、
- チューブ内部の複数構造と分流設計
- ノズルのストライプ専用仕切り
- 高粘度ペーストによる混ざらない流動特性
- 均一充填による工場レベルの精密制御
という、見た目を保ちながら機能性を両立した工学的デザインの成果です。
つまり、あの模様は印刷ではなく「流体の芸術」。
私たちが何気なく押し出しているそのストライプには、
ミリ単位の設計と物理制御が凝縮されているのです。

 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											