なぜスーパーボールは“床で高く弾む”のに土では鈍るのか?素材と地面の反発係数の科学
 
										スーパーボールを床に落とすと勢いよく跳ね返るのに、
公園の地面や砂の上だとほとんど弾まない──。
同じボールなのに、なぜこんなに違うのでしょうか?
実はその理由は、「反発係数(はんぱつけいすう)」と呼ばれるエネルギーの返りやすさにあります。
この記事では、スーパーボールが床では弾み、土では鈍る理由を物理の視点からシンプルに解説します。
理由①:「反発係数」が地面によって違う
物体がぶつかったとき、跳ね返りの勢いを表す指標が反発係数(Coefficient of Restitution, e)です。
これは「ぶつかる前の速度に対して、跳ね返る速度がどれくらい残っているか」を示す値で、
1に近いほどよく弾み、0に近いほど弾まないことを意味します。
| 素材 | 反発係数(目安) | 弾みやすさ | 
|---|---|---|
| ステンレス床 | 約0.9 | 非常に弾む | 
| 木の床 | 約0.8 | よく弾む | 
| コンクリート | 約0.85 | よく弾む | 
| 土・芝生 | 約0.3〜0.5 | 鈍い | 
| カーペット | 約0.2 | ほとんど弾まない | 
スーパーボール自体の反発係数は0.9前後と非常に高いのですが、
地面側の反発係数が低いと、全体としての弾みは大幅に減少します。
つまり、床で弾むのは「ボールも床も硬い=エネルギーが返ってくる」から。
逆に土では「地面が柔らかく、エネルギーを吸収してしまう」ため、跳ね返りが鈍くなるのです。
理由②:衝突時のエネルギーが“地面に吸収”される
ボールが地面に落ちたとき、運動エネルギーは
- ボールの変形
- 地面の変形
- 熱や音への変換
 に分配されます。
床のような硬い面では、地面がほとんど変形しないため、
ボール自身が縮んで弾性エネルギーとして貯めた分をほぼそのまま跳ね返すことができます。
しかし土や芝生では、衝突時に地面側も一緒に変形してしまい、
エネルギーの一部が地中や空気中に逃げてしまいます。
そのため、スーパーボールは「跳ね返る力をもらえない」=鈍くなるのです。
理由③:接地時間が長くなると“反発効率”が下がる
硬い床ではボールが一瞬だけ接触してすぐ離れますが、
柔らかい地面では接地時間が長くなるのもポイントです。
接触時間が長いと、エネルギーの伝達が徐々に散逸し、
- 摩擦
- 地面内部での粒子運動
- ボール内の内部損失
といった形で失われていきます。
結果として、跳ねるまでに貯めた弾性エネルギーが減少し、跳ね返りが小さくなるのです。
理由④:地面の“粒子構造”がエネルギーを逃がす
土の地面は、コンクリートのような一枚岩ではなく、
砂粒・水分・空気を含んだ粒状構造になっています。
そのため衝突時に:
- 粒子が動いてズレる
- 摩擦で熱が発生する
- 空気や水分が逃げる
といった現象が起き、エネルギーの多くが吸収・拡散されてしまうのです。
いわば、スーパーボールの力が「バネのように返される」のではなく、
「地面の中に沈み込んで消えていく」イメージです。
理由⑤:スーパーボールの素材“ポリブタジエン”の特性
スーパーボールは主にポリブタジエン(合成ゴム)という高弾性材料で作られています。
この素材は変形するとすぐに元に戻る「弾性回復力」が非常に高く、
硬い相手とぶつかったときに最大限の反発力を発揮します。
しかし、柔らかい相手(=土や芝)では、
ボールが変形しても相手が押し返してくれないため、
内部の弾性力が発揮されず、結果として跳ね返りが弱まります。
まとめ:弾むかどうかは“ボール”ではなく“地面次第”
スーパーボールが床で高く弾み、土で鈍るのは、
- 地面の反発係数(エネルギーの返りやすさ)の差
- 土ではエネルギーが吸収・拡散される
- 接触時間や粒子構造が弾性を奪う
といった理由によるものです。
つまり、ボール自体は同じでも、
「相手がどれだけエネルギーを返してくれるか」で弾み方が変わるというわけです。
スーパーボールが床で高く跳ねるのは偶然ではなく、
“硬い相手を選んで最大効率で反発している”物理の結果なのです。

 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											