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豆知識

なぜペットボトルのキャップは21山なのか?トルクと密封性を両立する国際規格の理由

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ペットボトルのキャップをよく見ると、細かいねじ山がぐるっと刻まれています。
このねじの数、実はすべてのキャップで共通して「21山」に統一されていることをご存じでしょうか。
一見地味な部分ですが、この数は
開けやすさ・密封性・製造コストなどを総合的に考えたうえで決められた、精密な国際規格なのです。
この記事では、ペットボトルキャップが21山になっている理由を、トルク(回す力)と密封構造の設計の観点から解説します。

理由①:開けやすさと密封性の“バランス設計”

ペットボトルのキャップは、開けやすさと密閉性という相反する要素を両立する必要があります。
ねじ山が少なすぎると:

  • 密封力が弱まり、炭酸や液漏れのリスクが上がる。
    逆に多すぎると:
  • ねじの摩擦が大きくなり、開けるときに固く感じる。

そこで最適化されたのが、1回転あたり21山(約1.5回転で完全開栓)という設計。
この数が最も滑らかに締まり、密封も安定することが実験的に示されています。

つまり、21山は「人が無理なく開け閉めでき、かつ漏れない」実用トルクの黄金比なのです。

理由②:国際規格「PCO(Plastic Closure Only)」で定められている

ペットボトルのねじ山数は、世界的に統一されたPCO規格(Plastic Closure Only)で定められています。

代表的なものに:

  • PCO1881規格(21山・炭酸飲料用)
  • PCO1810規格(旧型・やや背の高いキャップ)
    があります。

これらは、国際的な互換性を保つための標準設計であり、

  • どの国のキャップでも同じボトル口に適合する
  • 充填機やキャッパー(締付け機械)が共通化できる
  • 製造ラインを世界規模で共有できる

という生産・流通上の合理性が得られています。

理由③:炭酸圧にも耐える“ねじピッチと角度”

21山という数字は単なる「数」ではなく、山のピッチ(間隔)と角度に基づいて決められています。

ペットボトルのキャップでは、

  • ピッチ:約2.5mm前後
  • 山の角度:30〜40°程度
    が標準で、
    高い内圧(炭酸ガス)でも外れず、手の力でも開けられる設計になっています。

炭酸飲料では内部圧力が約3〜4気圧に達しますが、
21山構造により圧力を均等に分散でき、

  • ガス漏れを防止
  • キャップの飛び出しを防ぐ
  • 締めすぎでも変形しない

といった圧力耐性の最適化が図られているのです。

理由④:ねじ山数を増やすと“コスト・摩耗”が増大する

ねじ山が多いほど製造金型の加工精度が高くなり、

  • 金型コストが上がる
  • 成形時の離型(キャップを外す工程)が難しくなる
  • 使用中に摩耗しやすくなる

といった製造コスト面のデメリットが生じます。

21山は、

  • 製造の安定性
  • 金型寿命
  • 自動キャッピング機の速度

のバランスを取る上で、最も効率的な数として定着しました。

理由⑤:開け閉めトルクが“人の握力基準”に合わせてある

キャップの設計では、「人がどのくらいの力で開けられるか」も重要です。
日本工業規格(JIS S 0021)では、
成人女性の平均握力(約20〜25N)を基準に、
開栓トルク0.8〜1.5N·m程度が理想とされています。

21山構造にすると、

  • 摩擦が適度に分散される
  • 回転角度が短く済む
  • 手首の負担が少ない

という利点があり、老若男女が無理なく開けられる設計トルクを実現しています。

理由⑥:樹脂変形と密封パッキンの“押し込み圧”を制御できる

キャップ内部には、ゴムやEVA(樹脂)で作られたシーリングパッキンがあり、
ねじを締めることでこの部分がボトル口に密着します。

ねじ山が21個あると、

  • 均等なトルク分布でパッキンを押し込める
  • 樹脂口部の変形を最小限にできる
  • 長期保存時のガス漏れを防げる

という密封圧の制御性が非常に高くなります。

逆にねじが少ないと、締付け力が局所的になり、
炭酸ガスが抜けたり液体が滲んだりするリスクが上がります。

理由⑦:リサイクルと互換性のために“共通化”されている

現在のペットボトルは、

  • キャップ(ポリプロピレン)
  • ボトル(PET樹脂)
    を分別リサイクルできるようになっています。

21山規格を統一しておくことで、

  • 各社の製造ラインや回収設備が共通化できる
  • 互換性のないキャップが混ざらない
  • 環境対策とコスト削減を両立できる

というリサイクル効率の最適化にもつながっています。

まとめ:21山は“人と機械と圧力”のバランスで生まれた標準設計

ペットボトルのキャップが21山になっているのは、

  • 開けやすさと密封性を両立するため
  • 炭酸圧にも耐える最適トルク構造のため
  • 国際規格(PCO1881)による統一設計のため
  • 製造コスト・リサイクル性を保つため

という人間工学・流通・安全性をすべて考慮した結果です。

つまり、何気なく回しているあのキャップは、
世界中の研究と規格化の積み重ねで導き出された「21山の最適解」なのです。

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