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豆知識

なぜ鉄道は右側通行ではなく“左側通行”なのか?明治期の慣例と法整備の経緯

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道路では車も鉄道も「左側通行」が基本の日本。
しかし、世界を見渡すと右側通行の国が多い中で、なぜ日本は鉄道まで左側通行になったのでしょうか?
その理由は、明治時代の鉄道導入期にまでさかのぼります。
この記事では、日本の鉄道が左側通行を採用した背景を、歴史・技術・法制度の視点から解説します。

理由①:最初の鉄道が“イギリス式”だったから

日本の鉄道は、1872年(明治5年)に新橋〜横浜間で開業しました。
この鉄道建設を主導したのが、鉄道先進国のイギリスです。

当時のイギリスでは、道路交通・鉄道ともに左側通行が基本でした。
そのため、イギリス人技術者が設計・施工・運転指導を行った日本でも、

  • 駅のホーム配置
  • 信号機の位置
  • 分岐器(ポイント)の向き
    などがすべて左側通行前提で作られました。

つまり、日本の鉄道が左側通行になったのは、最初に輸入した技術がイギリス式だったことが最大の理由です。

理由②:初期の“レール配置”が左側前提で定着した

鉄道の線路は、複線の場合「上り線・下り線」が決められています。
イギリス式では、

  • 進行方向に向かって左側の線路を使う
  • 駅のホームは主に線路の外側に設置する
    というルールでした。

この構造がそのまま日本に持ち込まれた結果、
駅舎やホーム、信号システムも左側通行を前提に一体設計されました。

つまり、左側通行が“運転習慣”というよりも、設備設計上の構造ルールとして根付いたのです。

理由③:道路交通も同時期に“左側通行”で統一された

明治時代、日本では鉄道の普及と並行して道路交通も整備されていました。
1872年の鉄道開業から間もなく、1878年に東京府内規則で「左側通行」が明文化され、
後に全国へと広がっていきます。

こうして、

  • 鉄道:イギリス式で左側通行
  • 道路:警察法令で左側通行

と、両方の交通体系で“左側通行文化”が揃ってしまったのです。
結果として、鉄道も道路も「左側通行」が自然に受け入れられ、現在まで続いています。

理由④:車両設計・運転台の位置も左側に最適化された

鉄道車両の運転台(運転士席)は、基本的に左側にあります。
これは、すれ違う列車や信号を見やすくするためです。

左側通行の環境では、信号やホームが運転士の左手側にあるため、

  • 信号確認が容易
  • 停車位置の判断がしやすい
    という運転上の利点があります。

そのため、車両設計そのものが左側通行前提になり、逆に右側に変えると支障が出てしまうのです。

理由⑤:右側通行の鉄道は“特殊事情”による例外

実は日本でも、右側通行の鉄道がまったくないわけではありません。
たとえば:

  • 大阪環状線(JR西日本)の一部区間
  • 京阪電鉄の複線トンネル区間
    などでは、構造上の制約(勾配・トンネル・線路乗り入れの都合)で右側通行区間が存在します。

しかし、これらはごく一部にとどまり、全国的には左側通行が基本。
鉄道システム全体の整合性を保つため、原則は統一維持されています。

理由⑥:法制度でも“左側通行”が定められている

現在の鉄道に関する法令でも、左側通行が明文化されています。
たとえば、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令(国土交通省)」には、

  • 信号・保安設備の設置位置
  • 列車運転の方向
    などが左側通行を前提とした基準で設けられています。

こうした法制度上の根拠があるため、単なる慣習ではなく、法的にも左側通行がルールとして確立しています。

理由⑦:イギリス以外にも“左側通行”を採用する国が多い鉄道圏

実は、鉄道で左側通行を採用しているのは日本だけではありません。
イギリスの影響を受けた国々、例えば:

  • オーストラリア
  • インド
  • 南アフリカ
    なども、鉄道は左側通行です。

逆にフランスやドイツ、アメリカなどは右側通行が主流。
つまり、鉄道の通行方向は「どの国の技術を導入したか」で決まる」という歴史的背景があります。

まとめ:鉄道の左側通行は“歴史と制度が固めた標準”

鉄道が右側通行ではなく左側通行なのは、

  • 明治期にイギリスの鉄道技術を導入したこと
  • 設備設計・信号配置が左側通行前提で作られたこと
  • 道路交通と整合した交通ルールが整備されたこと
  • 法令でも左側通行が基準化されたこと

といった複合的な理由によります。

つまり、日本の鉄道が左側通行なのは偶然ではなく、
“最初の選択が今も続く、歴史と制度の必然”なのです。

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