なぜ自動ドアのセンサーは“腰の高さ”で反応しやすいのか？検知範囲の最適化

自動ドアの前を通ると、だいたい腰のあたりでセンサーが反応して開きます。上の方や足元ではなく、なぜその高さが選ばれているのでしょうか？
実はこの高さには、人の動き方や安全性を考慮した“検知範囲の最適化”という設計上の理由があるのです。

センサーの基本原理は「赤外線」や「マイクロ波」

自動ドアの多くは、赤外線センサーやマイクロ波センサーを使って人の動きを検知しています。
赤外線タイプは、人の体温や動きを感知する仕組みで、マイクロ波タイプは反射波の変化を捉えて動きを検出します。
これらのセンサーは、反応範囲や角度を細かく調整できるように設計されており、どの位置に設置するかで感度や誤作動率が大きく変わります。

腰の高さが最も「人の動き」を正確に捉えられる

腰の高さ（およそ80〜100cm付近）は、人の体の中心が通過する位置にあたります。
この位置で感知すれば、足だけや荷物だけでは反応せず、実際に人が通るときだけ確実に反応するという精度の高い検出が可能になります。
頭の高さだと背の低い人や子どもを検知できず、逆に足元すぎるとカートや風の動きなどにも反応してしまうため、腰の位置が最も安定しているのです。

誤作動を防ぐための設計バランス

自動ドアの誤作動には、風・雨・通行人の影・荷物の揺れなど、さまざまな要因が関わります。
腰の高さにセンサーを設定することで、こうした無関係な動きを検出しにくくしつつ、必要な動作だけを確実に拾うことができます。
また、センサーの照射範囲をやや下向きに調整することで、通りすぎた人にも反応せず、ドアが勝手に開閉を繰り返すのを防ぐ工夫もされています。

バリアフリー対応でも最適な高さ

車椅子利用者や高齢者にも配慮し、腰の高さに設定することで、誰が通ってもほぼ同じタイミングでドアが開くようになっています。
これは国際的なバリアフリー設計指針でも推奨されており、センサーの反応位置を「成人の腰〜胸部の範囲」にすることで、全ての人にとって自然な開閉を実現しています。

まとめ

自動ドアのセンサーが腰の高さで反応するのは、人の中心の動きを最も正確に検知でき、誤作動を最小限に抑えられるためです。
この高さは、安全性・省エネ・バリアフリーのすべてを考慮した結果導き出された、最適な位置なのです。
日常の何気ない動作の裏にも、人間工学とセンサー工学の緻密な計算が隠されているのです。