なぜ洗濯機の脱水槽に小穴が多数あるのか?水切りとバランス制御
洗濯機の脱水槽(ドラム)をよく見ると、内側にびっしりと小さな穴が空いています。
一見すると「水を外に出すため」だけのように見えますが、実はそれ以上の意味があります。
この無数の穴は、効率的な水切りと機械の安定運転を両立させるための、精密な設計なのです。
遠心力で絞り出す「水抜き口」の役割
脱水時、ドラムは高速で回転し、衣類の水分を遠心力で外側へ飛ばします。
その際、ドラムにある小穴が水の通り道となり、外槽へと効率的に水を排出します。
穴が少なすぎると水が抜けにくく、脱水が不十分になります。
逆に大きすぎると布が押し込まれて損傷するおそれがあるため、直径1〜3mm程度の微細な穴が最適とされています。
これにより、短時間でしっかりと水分を飛ばすことができるのです。
水の流れで「回転バランス」を安定化
小穴は排水だけでなく、ドラムの回転バランスを取る働きも持っています。
脱水中に衣類が片寄ると、ドラムの回転軸に偏心が生じ、ガタつきや騒音の原因になります。
そこで、穴の配置を均等にすることで、遠心力と水流の分布をバランス良く保ち、ドラムが安定して回転できるようになっているのです。
特に縦型洗濯機では、穴の配置パターンが綿密に設計され、振動を最小限に抑える工夫がされています。
穴から生まれる「空気流」で乾燥効率もアップ
穴の存在は、空気の流れにも関係しています。
脱水時には水と一緒に空気も引き込まれ、衣類の間に微細な気流が生まれます。
この気流が繊維の隙間の水分を引き剥がし、乾燥効率を高める副次的な効果を生みます。
特にドラム式洗濯機では、この通気構造が次工程の乾燥機能と連携し、電力消費を抑えながら効率的に水分を飛ばす設計になっています。
まとめ
洗濯機の脱水槽に小穴が多数あるのは、
水を逃がす・バランスを取る・空気を流すという三つの目的のためです。
単なる“水抜き穴”ではなく、
機械振動・水流・空気流をすべて制御するための精密な機能構造。
あの無数の小穴こそ、静かで効率的な脱水を支える見えないテクノロジーなのです。
