なぜマクドナルドのポテトは“縦長”カットなのか?食感と揚げムラ防止
世界中どこで食べても同じ味――。
マクドナルドのフライドポテトは、細く長い“シューストリングカット”が特徴です。
なぜこの形状に統一されているのか?
そこには、食感・熱伝導・品質管理をすべて両立させるための設計思想が隠されています。
縦長カットは“食感の黄金比”
マクドナルドのポテトは、長さ約7〜8cm、太さ約6〜7mmのシューストリングカット(細切り)。
このサイズは、外はカリッと、中はホクッとという理想の食感を得るためのバランスです。
太すぎると中まで火が通るのに時間がかかり、外側が焦げやすい。
逆に細すぎると全体がカリカリになって**“ポテトらしい柔らかさ”**が失われます。
実験と調理データの結果、この細さこそが最も均一に揚がる黄金比だとされています。
“縦長”にするのは、繊維方向と水分の抜け方のため
じゃがいもは、中心から外側に向かって繊維が放射状に走っています。
この繊維に沿って縦方向に切ると、揚げたときに水分がまっすぐ抜けやすく、
外はカリッと、中はふっくらとした構造を作ることができます。
もし繊維を横切るようにカットすると、水分がうまく抜けず、
ベチャッとした食感になりやすい。
縦長カットは、まさにじゃがいもの構造を理解した理にかなった調理方向なのです。
細いほど“揚げムラ”が起きにくい
マクドナルドでは、世界中どの店舗でも同じ品質を再現するために、
揚げムラを最小化する形状設計が求められました。
細長い形は、油の中で対流する際にムラなく熱が伝わりやすく、
1本1本がバラけやすいため、全体を均一に加熱できるという利点があります。
また、断面積が小さいほど油の温度低下を抑えられ、
短時間で理想の揚げ色に仕上げられるという効率面のメリットもあります。
“持ちやすく、冷めにくい”ユーザー体験設計
縦長形状には、食べやすさの工夫もあります。
ポテトが細く長いと、手や指でつまみやすく、
紙パッケージに差したときに立体的に並んで冷めにくい。
熱がこもりすぎず、空気の流れで余分な蒸気を逃がすため、
時間が経ってもベタつきにくく、最後の一本まで軽い食感を保てるのです。
世界規格を保つための“機械加工の最適形”
マクドナルドのポテトは、アメリカやカナダなどの契約農場で収穫された
専用品種(ラセットバーバンクなど)を使用しています。
これらの芋は長くて太さが均一なため、
縦方向にスライスするとロスが少なく、効率的に加工できるという利点があります。
機械カッターでのスライス工程も、縦長形状のほうが
刃の交換・清掃・歩留まりの面で優れており、
大量生産に向いた工業的合理性を持っています。
“世界中どこでも同じ味”を支える標準化
マクドナルドのポテトは、世界120か国以上で同じサイズ・同じ油温・同じ時間で調理されます。
この“再現性”を保証するには、形状のばらつきをなくすことが不可欠。
縦長・細切りカットは、揚げ時間と吸油率を統一しやすく、
誰が・どこで揚げても同じ品質を実現できる形だったのです。
まとめ:マックポテトは“科学されたシンプル”
マクドナルドのポテトが縦長カットである理由を整理すると、次の通りです。
- 繊維に沿って切ることで水分が抜けやすく、理想の食感になる
- 細く均一な形で揚げムラが起きにくい
- 世界中で同じ揚げ時間・品質を再現できる
- つまみやすく、冷めにくく、最後まで軽い食感を保つ
- 加工効率とコスト面でも最適
つまり、あの細く長いポテトは**「食感・効率・デザイン」のすべてを満たした工業食の完成形**。
“何気ない一本”の形には、世界規模の調理科学とユーザー体験設計が凝縮されているのです。
