なぜバーコードは“縦線”なのに斜めに印刷しないのか?読取精度の事情
商品のパッケージやレシートで当たり前に目にするバーコード。
よく見ると、どれもまっすぐな縦線で構成されていますが、印刷位置は必ず水平で、斜めに配置されたものはほとんどありません。
ではなぜ、バーコードは「斜めに印刷しない」のでしょうか?
その答えは、バーコードリーダーの読み取り方式と誤読防止の設計思想にあります。
バーコードは“縦線”を横方向にスキャンして読む
まず理解しておきたいのは、バーコードの基本的な読み取り原理です。
バーコードは白と黒の縦線の幅の組み合わせで数字や文字を表しています。
この縦線を、スキャナは横方向にレーザーを走査することで読み取ります。
つまり、スキャナはバーコードを「横切るように」光を当て、反射の強弱で黒と白を識別しています。
もしバーコードが斜めに印刷されていると、レーザーが縦線を正確に横切れず、誤った幅情報を検出してしまうおそれがあるのです。
斜め印刷は“光の反射角”を乱す
バーコードリーダーは、レーザー光を照射してその反射光の強さから情報を読み取ります。
縦線がまっすぐであれば、レーザー光は一定の角度で均等に反射し、正確に白黒の境界を判断できます。
ところがバーコードが斜めだと、反射角が変化して光がセンサーに戻らない部分が生じ、
スキャナは「線が途切れた」と誤認識してしまうことがあります。
このため、印刷の角度には±2〜3度以内といった厳しい精度基準が設けられているほどです。
自動ラインでの読み取りにも影響する
コンビニや工場などで使用される自動スキャナでは、
商品をコンベアやレジ台の上で一定方向に流しながらバーコードを読み取ります。
このときバーコードが斜めに印刷されていると、レーザーの読み取りラインとズレが生じ、
一部しかスキャンできない、読み取り時間が長くなるなどの問題が発生します。
つまり、バーコードは「縦線」だからこそ、印刷面に対して水平に配置する必要があるのです。
印刷精度と機械互換性のための標準化
バーコードには「JANコード」「EANコード」「UPCコード」など複数の国際規格がありますが、
いずれも印刷角度や線の太さ・間隔に厳密な基準が定められています。
これらの規格では、斜め印刷を避けることで以下の利点が得られます:
- どのスキャナでも同じ精度で読み取れる(機器間の互換性)
- 印刷時のズレや紙の歪みを補正しやすい
- デザイン面での見栄え・配置バランスが取りやすい
つまり、バーコードの水平配置は国際的に標準化された安全設計なのです。
まとめ:まっすぐな線は“確実に読める”ための形
バーコードが斜めに印刷されないのは、
- レーザーが横方向にスキャンする構造
- 反射角を一定に保つための設計
- 自動読み取り機の精度維持
- 国際規格で定められた角度制限
といった理由からです。
一見単純な「縦線の模様」に見えても、そこには“一瞬で確実に読み取るための設計思想”が隠されています。
