作業用BGMのルーツは?「BGM」という概念が誕生した歴史を解説

カフェや動画、そして「作業用BGM」プレイリストなど、私たちの生活に当たり前に溶け込んでいるBGM。けれど「BGM」という考え方が生まれたのは、実はそう昔のことではありません。本記事では、そのルーツから現代までの流れを見ていきましょう。
BGMのはじまりは古代の音楽療法?
音楽を「背景」として使う発想自体は非常に古く、エジプトでは4000年以上前に妊婦に音楽を聴かせて出産の苦痛を和らげた記録があります。中国やインド、古代ギリシャでも、音楽が精神療法や鎮痛に利用されていました。
ただし、これらは医療や儀式での使用であり、現在の「BGM」とは少し性格が異なります。
近代的なBGMは20世紀から
20世紀になると録音・放送技術が発達し、コンサートホール以外でも気軽に音楽を楽しめるようになりました。この時代背景の中で「空間に溶け込む音楽」という考え方が具体化していきます。
その中心的な存在が、フランスの作曲家 エリック・サティ でした。
サティの『家具の音楽』がBGMの先駆け
サティは1920年代に『家具の音楽』を発表しました。これは「家具のように生活に溶け込み、意識されない音楽」をコンセプトに作られた作品です。
- 短いフレーズを無限に繰り返す構造
- 聴衆に「聴かないでほしい」と求めた実験的演奏
- 音楽を「意識して聴くもの」という常識に挑戦
結果的にコンサートでは観客が注意を向けてしまい実験は失敗に終わりましたが、この発想は従来の音楽観を覆す画期的なものでした。
後世への影響
サティの「家具の音楽」の思想は、後の音楽にも大きな影響を与えました。
- 環境音楽:自然音や都市音なども音楽として取り入れる
- ミニマルミュージック:短いフレーズを繰り返す作曲法
どちらも第二次世界大戦後の音楽シーンにおける重要な潮流であり、現代のBGM文化にもつながっています。
まとめ
BGMの原点は古代にさかのぼりますが、現代の「背景音楽」としての形を切り開いたのは20世紀初頭のエリック・サティでした。
今日、私たちは作業用やリラックス用など、目的に応じて音楽を「背景」として自在に選べる時代に生きています。だからこそ、たまにはBGMを止めて、純粋に音楽そのものを味わう時間を持つのも良いかもしれません。