なぜバス優先レーンは“時間帯限定”が多いのか？交通容量の最適化

通勤時間だけ「バス専用」「バス優先」と表示される道路を見たことがあるでしょう。
なぜ終日ではなく、朝夕のラッシュ時だけ制限されるのでしょうか？
実はこれは、**公共交通と一般車の通行を両立させるための“交通容量の最適化”**に基づく仕組みなのです。

ピーク時に“バスの定時性”を確保するため

バス優先レーンの最大の目的は、混雑時でもバスを定時に走らせることです。
通勤・通学の集中する時間帯は、道路が最も混み合い、バスも他の車両に埋もれて遅延しがちになります。
そこで朝夕のピーク時間帯のみを「バス優先」に指定し、一般車を一時的に制限して公共輸送をスムーズにしています。

一方で昼間や深夜は交通量が減るため、バス専用にしても効果が薄く、道路が“遊んでしまう”ことになります。
そのため、混雑時間帯だけ制限を設ける“時間帯運用”が最も効率的なのです。

“交通容量”の最適化という考え方

道路は限られた空間資源です。バス優先レーンを終日運用すると、一般車の走行スペースが減り、
かえって他の車線で渋滞や排出ガスの増加が起こる可能性があります。
時間帯限定にすることで、ピーク時は公共交通を優先し、それ以外の時間は一般車も活用できる——
つまり、道路というリソースを時間でシェアして最適化する発想なのです。

この仕組みは「ダイナミック・レーンマネジメント」と呼ばれ、
道路の利用状況に応じて規制を切り替える現代的な交通運用手法の一つとされています。

ドライバーへの負担を軽減する現実的配慮

バス専用レーンを終日設けると、一般車が誤って走行してしまうトラブルも増えます。
しかし、時間帯限定であれば「通勤時間帯だけ規制」「日中は通常通行可能」といったわかりやすいルールで運用できます。
この方式は、標識や路面表示（例：「7–9時 バス専用」）によって明確に示されており、
ドライバーにも過剰な制約感を与えず協力を得やすいという利点があります。

バス運行本数との整合性

バスの運行本数自体も、朝夕のラッシュ時に集中するようダイヤが組まれています。
そのため、バス優先レーンを常時設けるよりも、実際にバスが多く走る時間帯だけ効率的に優先化したほうが合理的です。
バスが少ない時間帯に専用レーンを設けても、社会的コスト（規制・維持費用）に見合わないためです。

世界的にも一般的な運用方式

時間帯限定のバス優先レーンは、日本だけでなく世界各国の都市で採用されています。
ロンドンやシンガポールなどでも、朝7〜10時・夕方4〜7時のように明確な時間設定がされており、
混雑のピークを過ぎると一般車も利用可能になります。
これは、都市交通の需要をリアルタイムで分担させる合理的な仕組みとして国際的に確立しているのです。

まとめ

バス優先レーンが“時間帯限定”なのは、混雑時にバスの定時性を守りつつ、限られた道路を効率的に使うためです。
終日規制よりも交通容量を柔軟に活用でき、利用者にもわかりやすい運用。
都市交通の裏側では、時間という軸を使って「誰が・いつ・どのレーンを使うか」を最適化する緻密なデザインが行われているのです。