なぜカメレオンは色を変えるのか？保護色だけではない“変色”の本当の理由

「カメレオンは背景に合わせて体の色を変える」――多くの人がそう思っていますよね。
しかし実は、カメレオンの変色にはもっと複雑で、生きるための多面的な理由があります。
この記事では、カメレオンが色を変える仕組みと、保護・感情・コミュニケーションなどの目的を、科学的にわかりやすく解説します。

カメレオンが色を変えるのは「光の反射構造」のおかげ

カメレオンの体の色は、体表にある「色素胞（しきそほう）」という特殊な細胞によって決まります。
特に重要なのが、イリドフォア（iridophore）と呼ばれる細胞。
この細胞の中には、光を反射するナノサイズの結晶構造があり、その配列を変えることで見える色が変わります。

• 結晶が密になる → 青や緑などの短波長の光を反射
• 結晶が広がる → 黄色や赤などの長波長の光を反射

つまり、カメレオンは体の構造を変化させることで光の反射を操り、色を変えているのです。
これは絵の具のような「色の塗り替え」ではなく、光の物理的な制御による変化です。

変色の理由①：保護色としてのカモフラージュ

やはり最も有名な理由は、外敵から身を守るための保護色（カモフラージュ）です。
森の中では緑、砂地では黄や茶色など、背景と似た色に変えることで敵に見つかりにくくなります。

ただし、映画や漫画で描かれるように「背景そっくりに完全同化」するわけではありません。
カメレオンの変色範囲は限られており、あくまで周囲の明るさや気温、環境のトーンに合わせて微調整しているのです。

変色の理由②：感情表現やストレスのサイン

カメレオンの体色は、気分や体調によっても変わります。
たとえば――

• リラックスしているとき：落ち着いた緑や淡い色
• 興奮・威嚇時：赤やオレンジなど鮮やかな色
• ストレス・恐怖時：暗い茶色や黒っぽい色

これは、体温調整やホルモン分泌、神経反応によって色素胞が変化するため。
つまりカメレオンにとって色の変化は「感情を表す言語」でもあるのです。

変色の理由③：仲間とのコミュニケーション

カメレオン同士の交流にも、色の変化は欠かせません。
オス同士の縄張り争いや、求愛行動の際に、体色で意思表示を行います。

• オスがメスに求愛する → 明るい色でアピール
• 他のオスに対して威嚇 → 赤や黒を帯びた派手な色に
• 敗北や服従を示す → 落ち着いた淡色に戻る

このように、カメレオンの体色は“言葉の代わり”として使われているのです。
まさに「体全体で会話する動物」といえるでしょう。

変色の理由④：体温調整のため

色は光だけでなく熱も反射・吸収します。
そのため、カメレオンは体温を一定に保つためにも色を変えます。

• 寒いとき → 濃い色（熱を吸収しやすい）
• 暑いとき → 明るい色（熱を反射しやすい）

変色は、体の温度管理という生理的なメカニズムにも関わっているのです。

「色を変える能力」は種によって違う

すべてのカメレオンが同じように変色できるわけではありません。
種類によってはごくわずかしか色を変えられないものもいれば、全身をカラフルに変化させる種もいます。

特にマダガスカルに生息するパンサーカメレオンやエボシカメレオンは変色の幅が広く、
気分や光の当たり方によって虹色に輝くような発色を見せます。

まとめ：カメレオンの色は“生きるための言葉”

カメレオンが色を変えるのは、

• 周囲に溶け込むための保護色
• 感情や体調を表すコミュニケーション
• 温度を調整する生理的反応

など、複数の目的が重なった生存戦略です。
「色を変える＝背景に合わせる」だけではなく、心と体の両方を映し出すサインなのです。