なぜクレジットカードのICチップは“左上”にあるのか?読み取り位置と製造ライン
今や当たり前になったICチップ付きクレジットカード。
よく見ると、どのカードもチップの位置は「左上」に固定されています。
右側でも中央でもよさそうなのに、なぜ左上だけが標準になったのでしょうか?
そこには、機械設計と製造工程の合理性が隠れています。
読み取り端末が“左上差し込み”を前提としている
クレジットカードのICチップは、POS端末やATMの読み取りスロットに合わせて設計されています。
ほとんどの端末では、カードを表向き・手前から差し込むとき、
チップが左上にある状態が最もスムーズに接触するよう配置されています。
この位置にチップがあることで、端末内部の接点ピンと確実に合い、
読み取りエラーや摩耗を防げるのです。
つまり、チップ位置はカードではなく読み取り機の構造基準によって決まっています。
世界共通の標準規格「ISO/IEC 7816」
実は、ICチップ付きカードの設計には国際規格が存在します。
「ISO/IEC 7816」では、チップの位置・向き・端子構造が細かく定められており、
チップはカード左側から一定距離(横18mm、縦10mm前後)に配置するよう規定されています。
この位置が世界中で統一されているため、
どの国の端末でも同じように読み取れる互換性が確保されています。
製造ラインの効率を最適化できる
カード製造の工程では、磁気ストライプ・署名欄・印字情報・チップ埋め込みが
一方向に流れるよう配置されています。
チップを左上に固定することで、
印字やエンボス加工の位置と干渉せず、大量生産時のミスを防ぐ設計が可能になります。
もしチップ位置をカードごとに変えると、製造機器の調整や検査工程が複雑化し、
コストが上がってしまいます。
つまり、左上配置は世界共通の製造合理性でもあるのです。
人間工学的にも扱いやすい位置
カードを右手で持ち、端末に差し込む動作を想定すると、
左上にチップがあると自然な角度で挿入できます。
逆に右側にあると、端末に手が当たったり、
カードを上下逆に持つリスクが増えるため、操作性が下がります。
このように、左上位置はユーザーの持ち方・動作方向・右利き比率を考慮した最適解でもあります。
まとめ
クレジットカードのICチップが左上にあるのは、
読み取り端末との接触精度・国際規格・製造効率・操作性をすべて両立させるためです。
左上という位置は偶然ではなく、
世界中の端末と人の手の動きを統一した、最も合理的な“世界標準の角”なのです。
