なぜカタカナは角ばっているのか？筆跡と印刷の歴史

日本語にはひらがなとカタカナというふたつの仮名文字がありますが、よく見ればひらがなが丸みを帯びた柔らかな線であるのに対し、カタカナは直線・角張った線が目立ちます。
なぜカタカナは丸くなく、あえて“角ばった”形になったのでしょうか？
その答えは、奈良〜平安期の写本時代から印刷・活字時代に至るまでの歴史的な変化と、筆記・印字双方での実用的な要請にあります。

理由①：カタカナの起源が漢字の“部首・断片”からだから

カタカナは、漢字（万葉仮名）から派生した文字です。ウィキペディア+2Coto Japanese Academy+2
たとえば「カ（ka）」は漢字「加」の左側を抽出して作られ、「サ（sa）」は「左」の左側という具合です。
つまり、漢字の構成要素を“切り取って”できた文字であるため、自然と直線的・断片的な字形になりました。Coto Japanese Academy+1
このため、丸みを帯びた筆致よりも、部首などの「線と角」の構成がそのまま残りやすかったのです。

理由②：写本・筆写時代に「速記・注釈用」として角ばった書体が好まれた

平安時代以降、仏典や漢文注釈を行った僧侶らが、万葉仮名や漢字に補助として仮名を付ける際に、ひらがなのように曲線を多用すると書くのに手間がかかりました。
そのため「読み仮名／注釈用仮名」としてのカタカナは、少ない筆画・直線主体で書きやすい構造が求められたのです。immersionlanguageclub.com+1
この「書きやすさ」が、丸みより角張りを残す傾向を強めました。

理由③：印刷・活字時代に“再現性・省スペース・判読性”が重視された

印刷・活字の発展期になると、文字は刷版・金属活字・機械写植などで扱われるようになりました。
曲線の多い文字よりも、直線・角張りのある文字のほうが版ズレが少なく、明確に印字されやすいという利点がありました。
また、カタカナは外来語・専門語・強調用などで「区別して見せる」役割もあり、角ばった字形＝視認性のためのデザインとも言えます。globespeaker.com+1

理由④：ひらがなと用途を区別するための視覚的な違い

カタカナとひらがなは、音は同じでも用途が異なります（例：外来語、擬音語、強調など）。そのため、字体にも視覚的な「違い」が必要でした。
ひらがなが丸く流れる線で“柔らかさ・日常語”を表現する一方、カタカナは“直線・角”という形で“外来語・技術語・強調”を表す区別性を備えたのです。Reddit+1

理由⑤：書法・筆記具の変化も影響した

古来、毛筆で漢字や仮名を筆写していた時代、曲線を多用するひらがなにはある程度の余裕がありました。一方、注釈用や横書き・速記用途などでは、細筆・硬筆・簡略書体の利用が進み、直線的な筆画が合理的でした。
そのため、徐々にカタカナの字形には“角度をつけた筆画”が定着していったという側面もあります。

理由⑥：近代活字・デジタルフォント化でも角ばった形が継承された

明治以降の活版印刷・写植・デジタル化の時代でも、カタカナの角張った字形はそのまま継承されました。
デジタルフォント設計上、曲線主体の文字よりも直線主体の方が画素・アウトライン設計・読みやすさで“メリット”があるため、結果としてカタカナの角ばった形が今なお広く使われています。

理由⑦：デザイン・広告用途で“目立つ形”として活用されている

現代では、カタカナが看板・広告・ブランドロゴ・商品名などに多用される背景があります。
このとき「角ばった字体＝機械的・強調的・外来語感」というイメージが生まれ、丸みのあるひらがなとの対比で“異質・新しいもの”としてカタカナが用いられることもあります。Tokyo Weekender

まとめ：カタカナが角ばっているのは“起源・用途・技術”すべてが関係している

カタカナが丸くなく角ばっているのは、

• 漢字の部首から派生した“断片文字”だから
• 注釈・速記用途で書きやすさを優先されたから
• 印刷・活字・デジタルフォント時代でも再現性が高いから
• ひらがなとの差別化・視認性が求められたから

という歴史的・用途的・技術的な理由が複合しているためです。
つまり、カタカナの角ばった形は偶然ではなく、機能と文化が形になったデザインなのです。