なぜ多くの国旗は赤・白・青なのか?染料の歴史と色に込められた意味
アメリカ、フランス、イギリス、オランダ、ロシア、チリ……。
世界の国旗を見渡すと、「赤・白・青」の3色がやけに多いことに気づきます。偶然の一致? それとも何か共通した理由があるのでしょうか?
実はこの3色には、染料技術の発展史と文化的・政治的象徴性の両面から、選ばれやすい明確な理由があるのです。
染料の歴史が生んだ“定番の3色”
現在のように人工的な染料が使えるようになったのは19世紀以降のこと。それ以前は、天然の植物や鉱物を原料にして色を出していました。
- 赤:アカネ(茜)やコチニール(サボテンにつく虫)から抽出
- 青:インディゴ(藍)から抽出
- 白:染色せず、布そのものの色
これら3色は比較的安定して発色できるうえ、長期間退色しにくいという特徴がありました。つまり「技術的に実現しやすい3色」だったのです。
特に赤と青は、天然染料として古くから世界各地で利用されており、戦旗や王家の紋章などでもよく使われていました。こうして“布に使いやすい基本の色”として定着していきます。
フランス革命が生んだ象徴的トリコロール
「赤・白・青」が国旗の象徴的な組み合わせになった大きな契機は、フランス革命(1789年)です。
革命軍が掲げた旗は「青・白・赤」の三色旗。
- 青と赤:パリ市の伝統色
- 白:王政を象徴するブルボン家の色
つまり、民衆と王が一体となる新しい国家を意味していました。
この「トリコロール(三色旗)」は後に多くの国が模範とし、独立や革命のシンボルとして広まりました。アメリカやロシア、オランダ、チリなどがその代表例です。
各色に込められた意味
赤・白・青の3色は、国や時代によって解釈が異なりますが、おおまかには次のような象徴が込められています。
| 色 | 主な意味 | 代表的な国旗 |
|---|---|---|
| 赤 | 勇気・自由・犠牲 | アメリカ、フランス、日本、スイス |
| 白 | 平和・純潔・誠実 | フランス、ロシア、韓国 |
| 青 | 自由・信頼・正義 | アメリカ、イギリス、ノルウェー |
つまり、技術的理由と象徴的意味の両方から、この3色が国旗デザインの主流となったのです。
現代でも続く「トリコロール人気」
今日でも、国旗デザインで赤・白・青が選ばれるケースは多く、たとえばチェコ、アイスランド、ノルウェー、クロアチアなどが挙げられます。
その理由は、色の組み合わせ自体が「国家」「団結」「自由」といった普遍的な価値を表現しやすく、また視認性が高いことにもあります。遠くからでもはっきりと見えるため、旗としての実用性も高いのです。
まとめ
赤・白・青の国旗が多いのは、単なる偶然ではありません。
- 染料技術の制約から生まれた3色
- 革命と自由の象徴としてのトリコロール
- 普遍的価値と高い視認性をもつ色構成
この3つの要因が重なり、世界中で愛される国旗カラーとなったのです。
次に国旗を見かけたときは、そこに秘められた「色の歴史」にも思いを馳せてみてください。
