なぜ虹は“円”なのに地上では“弧”に見えるのか?観測位置と光の反射角の関係
雨上がりに現れる美しい虹。
空に架かるその姿は“半円”や“弧”のように見えますが、
実際の虹は完全な円形でできています。
では、なぜ私たちの目には“弧”にしか見えないのでしょうか?
その理由は、観測者の位置と地平線との関係にあります。
虹の正体は「太陽光の反射と屈折」
虹は、空気中の雨粒に太陽光が入り、反射して出てくる光が作る現象です。
太陽光は赤・橙・黄・緑・青・藍・紫という7色の光の集まりで、
雨粒に入ると屈折 → 反射 → 再び屈折の順で進みます。
このとき光は、雨粒の中で
- 赤:約42°
- 紫:約40°
という一定の角度で反射して出てくる性質があります。
この「太陽光と観測者を結ぶ線に対して約42°」という角度が、
虹ができる“円の半径”を決めているのです。
観測者を中心に“42°の円”ができている
虹は、太陽の光を背にした観測者を中心として、
太陽光線に対して約42°の位置に現れます。
つまり、虹とは「観測者の目を中心とする円」です。
どの雨粒から出た光を見ても、
あなたの視点から見れば常に同じ角度上にある点が虹になります。
したがって、本来の虹は──
あなたの目を中心にした“完全な円”の光の輪
なのです。
地上では地平線が“下半分”を隠している
では、なぜその円が弧にしか見えないのでしょうか?
それは、地上にいる私たちが地平線によって下半分を見られないからです。
虹の下側部分は、観測者の視線から見て地平線の下、
つまり地面の向こう側に位置しているため、
物理的に観測できません。
そのため、私たちは虹の「上半分」だけを見ており、
結果として空に弧を描いたように見えるのです。
飛行機や山頂からは“円形の虹”が見えることも
実際には、高い場所から観測すると虹が完全な円として見えることがあります。
飛行機から下を見たとき、
雲の中に太陽を背にしてできる完全な円の虹が見えることがあり、
これは「グローリー(Glory)」とも呼ばれます。
同様に、山頂や高層ビルなど、
地平線の位置より上から見下ろす条件が揃うと、
虹の“円”全体を見ることが可能になります。
虹の中心は太陽の反対側にある
虹を観察するとき、太陽の位置にも注目です。
虹の中心点は、太陽とあなたを結ぶ直線の反対側の延長線上にあります。
つまり、太陽が低い位置にあるほど、
反対側にできる虹は高く大きく見えます。
逆に太陽が高くなると、
虹の円は地平線の下に沈んでしまい、見えなくなります。
これが「昼間には虹が見えにくい」理由でもあります。
まとめ:虹が“弧”に見えるのは地上からの視点のせい
虹が円なのに弧に見えるのは、
- 太陽光が約42°の角度で反射してできる“円形”の光現象である
- その下半分が地平線の下に隠れて見えない
- 高所からは実際に“円い虹”を観測できる
という観測位置と視界の制限によるものです。
つまり、虹は最初から“半円”なのではなく、
本当は空全体に広がる完璧な円の光の輪。
私たちが見ているのは、そのうちの“見える範囲だけ”なのです。
