当サイトの収益&PV数公開中!
豆知識

なぜOAチェアのキャスターは二輪が多いのか?段差越えと床面圧

mixtrivia_com

オフィスチェアのキャスターをよく見ると、1カ所に小さな車輪が2つ並んだ二輪構造になっています。
一見すると一輪でも十分動きそうなのに、なぜわざわざ二輪にしているのでしょうか?
そこには、移動の安定性と床への負荷分散を両立させる工学的な理由があります。

二輪構造は“段差を乗り越えやすい”

キャスターが二輪である最大の理由は、段差や凹凸を滑らかに越えるためです。
一輪キャスターの場合、段差にぶつかると一瞬で荷重が集中し、止まりやすくなります。
しかし二輪キャスターでは、

  • 手前の車輪が段差に当たっても、
  • 後ろの車輪がすぐ後から支える
    という連続的な動作になるため、段差を“転がりながら”越えられるのです。

この構造により、カーペットの継ぎ目やケーブルなどの小さな段差もスムーズに通過でき、
座ったままでも安定した移動が可能になります。

“接地面積が広く”床を傷つけにくい

オフィスの床はフローリングやタイルカーペットなど多様で、
床面への圧力(床面圧)が高すぎると傷や凹みの原因になります。

二輪構造は接地面が2倍になるため、
同じ荷重でも1輪あたりの床面圧を半減できます。
これにより、床へのダメージを抑えつつ、軽い力で転がせるという利点も生まれます。

さらに、二輪がわずかに独立して回転することで、
床面のわずかな傾きや凹凸にも追従し、安定した姿勢を保てるのです。

“旋回性と安定性”のバランスを取る設計

OAチェアのキャスターは、中心軸(スイベル)で360度回転する構造になっています。
一輪だと横方向への傾きが大きくなり、
椅子全体が不安定で倒れやすくなるおそれがあります。

二輪にすることで、車軸が横方向に広がり、重心が低く安定
左右方向への力にも強くなり、スムーズに旋回できます。
つまり二輪構造は、安定性と方向転換性能を両立する最適な構造なのです。

製造コストと耐久性のバランスも良い

二輪キャスターは部品点数こそ増えますが、
樹脂製のモジュール構造で量産が容易です。
また、車輪1つあたりの負荷が分散されるため、摩耗が遅く長寿命になります。

実際、業務用椅子では耐久テストとして
「100kg荷重で10万回転以上の転がり試験」などが行われますが、
二輪構造はこうした厳しい試験にも安定して合格しやすい設計なのです。

一輪キャスターが使われるのは特殊用途のみ

一輪キャスターは、医療用カートや撮影機材のように移動方向が限定される機器で使われます。
これらは方向安定性を重視するため、あえて旋回性を抑えた一輪構造を採用しています。
しかしOAチェアのように自由な方向へ動かす前提の製品では、
二輪キャスターのほうが圧倒的に有利なのです。

まとめ

OAチェアのキャスターが二輪なのは、
段差越えのスムーズさ・床への優しさ・旋回時の安定性をすべて両立するためです。
一見小さな違いに見えても、
二輪化によって操作感・耐久性・安全性が大きく向上しています。
私たちが何気なく転がしているあの椅子の脚には、
人の動きを支えるための緻密な機構設計が隠されているのです。

記事URLをコピーしました