自分より重いものは動かせない？力学で解く「重い物を動かす仕組み」

「自分の体重より重い物をロープで引っ張ったら動かせるの？」と考えると、作用反作用の法則から「絶対に動かせないのでは？」と思ってしまいます。ですが現実にはトラックを人間が引っ張って動かすことも可能です。この記事では、力学の観点から「重い物を動かせる理由」を解説します。

力を考えるときは矢印を書き出す

トラックを人が引っ張る実験はテレビ番組などでもよく見かけます。実際、数十倍も重いトラックを動かせるのはなぜでしょうか？

物体にかかる主な力を整理すると次の4つです。

1. ロープを引く力／ロープに引かれる力
2. 地面との摩擦力
3. 重力
4. 垂直抗力

このうち「動く・動かない」に関わるのはロープの力と摩擦力です。

摩擦力には2種類ある

摩擦力には「静止摩擦力」と「動摩擦力」があります。

• 静止摩擦力 … 物体が止まっているとき、外力を打ち消すようにはたらく力（限界を超えると物体が動き出す）。
• 動摩擦力 … 動き出した後にもはたらく摩擦力。静止摩擦力よりも小さいのが一般的。

そのため、家具などを動かすとき「動き始めが一番大変で、一度動けば楽になる」のはこの仕組みによります。

重い物を動かす条件

トラックを引っ張るためには次の2つの条件が必要です。

1. 人間が出せる力 > トラックにはたらく最大静止摩擦力
2. 人間の足に働く最大静止摩擦力 > トラックの摩擦力

もし地面がツルツルなら人間の方が先に滑ってしまいますし、逆にトラックの摩擦力が大きすぎれば動かせません。

車輪や道具が摩擦を減らす

ではなぜトラックは人力で動かせるのでしょうか？
理由はシンプルで、車輪によって摩擦力が大幅に小さくなるからです。もし同じ重さの物体を床にベタ置きしたら、摩擦が大きすぎて動かせません。

家具を少し持ち上げると動かしやすくなるのも、摩擦が軽減されるためです。人類が車輪やてこ、滑車といった道具を発明したのは「摩擦や重力に打ち勝つ知恵」でもあるのです。

まとめ

• 重い物を動かすには「相手の摩擦力を上回る力」と「自分の足元の摩擦」が必要
• 摩擦力には「静止摩擦力」と「動摩擦力」があり、動き出しに一番大きな力が必要
• 車輪や道具を使えば摩擦を減らし、少ない力で重い物を動かせる

「自分より重いものは動かせない」と思いがちですが、摩擦や作用反作用の仕組みを理解すれば可能だとわかります。重い物を動かすときは、筋力だけでなく知恵を使うことも大切です。