なぜQRコードは“3つの四角”が目印なのか?位置合わせパターンの役割
レシート、ポスター、商品パッケージなど、今やどこでも見かけるQRコード。
その左上・右上・左下の角には、必ず3つの大きな四角が配置されています。
この特徴的な「三つの目印」は、実はデザインではなく、読み取りを正確に行うための構造です。
なぜ3つなのか?そして、どんな役割を果たしているのか?
今回は、QRコードの「位置合わせパターン」の秘密を解き明かします。
3つの四角は「位置検出パターン」
QRコードの隅にある大きな四角は、「位置検出パターン」と呼ばれます。
これは、スキャナやスマートフォンのカメラがQRコードの位置・傾き・サイズを正確に認識するための目印です。
カメラはまずこの3つの四角を検出し、
- QRコードが画面内のどこにあるか(位置)
- どれくらい傾いているか(角度)
- どの程度の大きさか(距離・拡大率)
を瞬時に計算します。
この情報をもとに、内部の細かい白黒パターンを補正して読み取っているのです。
なぜ“3つ”なのか?
では、なぜ4つではなく3つなのでしょうか。
これは、3点で平面を一意に決定できるという幾何学的な原理に基づいています。
3点があれば、QRコードがどの角度で傾いていようと、平面上の位置と回転を正確に特定できます。
もし2つだけだと、回転や反転の判断ができず、どちらが上か分からなくなります。
一方で4つにすると冗長で、データ容量が減ってしまうため、3つが最小かつ最適な構成なのです。
右下にある“小さな四角”は別の目的
QRコードの右下付近には、もうひとつ小さな四角があります。
これは「位置合わせパターン」と呼ばれ、印刷の歪みやレンズのゆがみを補正するための補助マーカーです。
とくに大型のQRコード(データ量が多いタイプ)では、中央部分の位置ずれが起こりやすくなるため、
このパターンが正確な読み取りを助けています。
つまり、3つの大きな四角が「位置と角度」を検出し、小さな四角が「中央部のズレ」を補正しているのです。
どんな角度からでも読める工夫
QRコードがバーコードよりも優れている点のひとつが、向きを気にせず読み取れることです。
位置検出パターンが3つあることで、スマホが上下左右どの方向からスキャンしても、すぐに「QRコードである」と認識できます。
たとえばポスターが斜めに貼られていても、カメラが自動的に傾きを補正してデータを復元します。
これにより、バーコードのように「水平に揃えてスキャンする」手間がなくなり、圧倒的に使いやすくなったのです。
QRコードの設計思想:高速・確実・自由な向き
QRコードは1994年に日本の自動車部品メーカー「デンソーウェーブ」が開発したもので、
もともとは工場の部品管理を高速化するために生まれました。
大量の部品をどの角度からでも素早くスキャンできるよう、
- 向きの判別(3つの四角)
- 傾き補正(位置合わせパターン)
- 誤り訂正機能(データの一部欠損でも復元)
などが組み込まれています。
つまり、QRコードのあの「3つの四角」は、“一瞬で正確に読める”ための必須パーツなのです。
まとめ:3つの四角は“目印”であり“頭脳”
QRコードの3つの四角は、単なる飾りではなく、
- コードの位置・角度・大きさを特定する「位置検出パターン」
- 歪みを補正する「位置合わせパターン」
- 向きを問わず確実に読み取るための設計
といった機能を果たしています。
小さな四角の並びの中に、ここまで精密な構造が隠されているとは驚きですね。
