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豆知識

なぜ冷蔵庫の製氷皿はシリコンでないことが多いのか?収縮率と吐出機構

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家庭用の冷蔵庫の自動製氷機を開けてみると、氷を作る皿はほとんどが硬いプラスチック製です。
手動で使う柔らかいシリコン製トレーのほうが扱いやすいのに、
なぜ冷蔵庫では採用されていないのでしょうか?
その理由は、氷の収縮率と自動吐出機構の精密設計にあります。

シリコンは柔らかすぎて“押し出し構造”に向かない

冷蔵庫の自動製氷機では、氷が固まるとモーターで製氷皿をねじるように変形させ、
氷をパキッと割って排出します。
この動作には、皿が一定の弾性を保ちつつ元に戻る力(復元力)が必要です。

シリコンは柔らかく変形はしやすいのですが、
変形したあとに元の形に戻る力が弱く、精密な動きを再現しにくいという欠点があります。
そのため、モーターのトルクや回転角に対して安定した動作が得られないのです。

シリコンは“収縮率”が大きすぎる

氷は−10〜−20℃で凍結すると体積が約9%膨張します。
このとき、製氷皿の素材も冷却でわずかに収縮しますが、
シリコンはポリプロピレン(PP)などの樹脂よりも温度変化による収縮率が大きい素材です。

そのため、氷との間にできるわずかなすき間(剥離)が確保できず、
結果的に氷が皿に張り付いて出にくくなる
ことがあります。
硬質樹脂のほうが熱膨張が小さいため、
氷が固まったあと自然に“パキッ”と外れやすくなるのです。

耐久性と寸法安定性が求められる

自動製氷皿は、1日に何度も凍結と解凍を繰り返します。
シリコンは柔軟ですが、繰り返しのねじり応力に弱く、形が歪みやすいという弱点があります。
特に可動パーツやヒンジ部では、
シリコンが経年で伸びたり切れたりして動作不良の原因になる可能性があります。

一方、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)は、
耐寒性・寸法安定性・加工精度に優れており、
量産に適した素材として信頼性が高いのです。

シリコンは水の“ぬれ性”が高い

シリコン表面は親水性があり、水が張り付きやすい特性を持っています。
このため、凍結時に水と素材の界面で密着しやすく
氷が離れにくくなる傾向があります。

一方、プラスチック製トレーは表面が疎水性で、
凍結後の氷が“自然に浮き上がる”ように外れる構造。
この“ぬれ性の違い”も、実は自動吐出の成功率を左右する要因なのです。

コストと加工性の問題も

シリコンは成形に時間がかかり、金型寿命も短いため、
大量生産には向いていません。
冷蔵庫の部品は数万回の耐久テストに耐える必要があるため、
コスト効率・加工精度・再現性の面で、
射出成形しやすい硬質樹脂が選ばれているのです。

“手動用”と“自動用”では求められる機能が違う

手動のシリコントレーは「人の手で押し出す柔軟性」がメリット。
一方、自動製氷機は「機械が確実に動作する剛性」が最優先です。
つまり、同じ“氷を作る”道具でも、
人力と機械動作で最適な素材がまったく異なるということなのです。

まとめ

冷蔵庫の製氷皿がシリコンでないのは、
柔らかすぎてモーター制御に不向き・収縮率が大きい・氷が離れにくいという技術的理由によるものです。
硬質プラスチックは、寸法安定性と復元力が高く、
自動吐出を正確に繰り返すのに最適な素材。
見た目は地味でも、その選択は量産精度と信頼性を両立する冷却工学の最適解なのです。

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