徒歩1分=80メートルと定められた経緯とは?不動産広告におけるルールの裏側
不動産広告で「駅まで徒歩5分」といった表示を目にすることがありますが、その「徒歩1分=●メートル」という基準にはしっかりとした背景があります。実は「1分=80 m」というルールが1963年(昭和38年)に定められており、そこには消費者保護と業界の透明化を目的とした歴史がありました。
徒歩1分80 mの根拠
不動産広告において「徒歩所要時間=道路距離を80 mで1分換算」という基準が、不動産の表示に関する公正競争規約施行規則第9条にて定められています。 id-home.net+3Home4U+3ウィキペディア+3
この数値は、実際に健康な成人(特にハイヒールを履いた女性)による歩行実験で「1分間あたり約80.3 m」という平均速度が測定されたという逸話もあります。 id-home.net+1
背景:虚偽・誇大広告の蔓延と消費者保護
高度経済成長期の昭和30年代、不動産需要の増加に伴い、「駅から近い」という表示が物件価値に直結していました。
そのため広告において「駅徒歩5分=実際はもっと遠い」というような誇大表示が問題視され、消費者団体からの改善要求が出されました。 有限会社ワンダーランド+1
この状況を受け、業界と監督機関(公正取引委員会など)が協議し、「標準化された算出基準を設ける」必要に迫られたのです。 sunlife-h.co.jp+1
なぜ「100 m」ではなく「80 m」になったのか
当初、業界側からは「1分=100 m」を基準とすべきという案もありました。 reds.co.jp+1
しかし、消費者目線を考慮した際、「早足の成人男性の速度」ではなく、より一般的に“歩きにくい靴(ヒール等)を履いた女性”でも十分カバーできる速度とすべきという意見が採用されました。実際に女性職員がハイヒールで実験を行い、「おおむね1分=80 m」という数値を出したという説が広く語られています。 tsugite-fudousan.com+1
このように「消費者が過小評価をされない」ように配慮された結果、80 m換算が定められたのです。
算出時の注意点と実際のズレ
ただし、この基準には次のような“ズレ”が生じうる事情があります:
- 距離は道路に沿った「道路距離」で計測し、直線距離ではありません。 sunlife-h.co.jp
 - 信号待ち・踏切待ち・階段・坂道などの時間はこの時間計算には含まれていません。 株式会社 ハウスセイラーズ
 - 1分未満の端数は切り上げて1分と表示する必要があります。 Home4U
そのため、実際に歩いてみると「広告では5分だったけど体感では7分かかった」ということも少なくありません。 
まとめ:徒歩1分=80 mは「公平な広告表示」のための基準
「徒歩1分=80 m」というルールは、不動産広告において消費者に誤解を与えないよう、歩行実験に基づき定められたものです。
つまり、この数値は「簡潔でわかりやすい表示」と「現実に近い歩行速度」を両立させるための妥協点でもあります。
物件選びの際には、この基準を理解したうえで「実際に歩いてみる」ことも重要と言えるでしょう。
ぜひ 次回物件を見る際には「この広告はどの起点から計測しているか」「このルートを実際に歩くとどう感じるか」も参考にしてみてください。
