なぜ食品トレーは“白”が多いのか?内容物の見栄えとコストの最適バランス
 
										スーパーやコンビニで並ぶ肉や魚、惣菜のトレー。
よく見ると、ほとんどが白いプラスチック容器です。
なぜ黒や透明ではなく、白が圧倒的に多いのでしょうか?
実はそこには、見た目の効果・衛生印象・コスト構造といった合理的な理由が隠れています。
この記事では、食品トレーが“白一色”になった背景を、デザインと経済の両面から解説します。
白いトレーの基本機能:清潔・無垢・中身を引き立てる
白は「清潔」「無垢」「安全」といったイメージを持つ色で、
食品包装では最も衛生的で安心感を与える色とされています。
スーパーでの第一印象は「見た目=安心感」。
白いトレーは、
- 汚れや異物が目立ちやすく品質確認しやすい
- 食材の色味を自然に引き立てる
- 冷蔵ケース内でも明るく見える
 といった理由から、購買意欲を高める「心理的な演出」にもなっています。
理由①:中身が映える「背景色」として最適
白いトレーは、あくまで“引き立て役”。
肉や魚、惣菜の色そのものを正確に見せるために選ばれています。
たとえば、
- 赤身肉やマグロの赤 → 白背景でより鮮やかに見える
- 白身魚や豆腐 → 透明よりも形がくっきりする
- 緑の野菜 → コントラストが映える
このように白は、ほぼすべての食品ジャンルで「邪魔をしない」色です。
黒トレーや金トレーは高級感は出せるものの、
食材によってはくすんで見えるため、汎用性に欠けます。
その結果、白が業界の共通基準色として定着しました。
理由②:汎用性が高くコストが安い
食品トレーの主原料は、ポリスチレン(PS)や発泡スチロール。
この素材に顔料を混ぜて着色しますが、白色顔料(酸化チタン)は最も安価で入手しやすく、
- 着色コストが低い
- 原料の混合精度に影響されにくい
- 製造ラインを共通化できる
 という経済的メリットがあります。
一方、黒・金・透明などの特殊色は、
顔料コストが高い上、異物混入や色ムラの検品コストも増大します。
そのため、メーカーは大量生産・低価格を維持できる白を標準色として採用しているのです。
理由③:照明と陳列環境に合わせた“見え方設計”
スーパーの照明は、冷光色(白っぽい蛍光灯)であることが多く、
白いトレーは光を反射してケース全体を明るく見せる効果があります。
また、冷蔵ケースの奥行きが深い場合でも、
白トレーは影ができにくく、商品の鮮度感を維持。
逆に黒トレーは光を吸収して暗く見えるため、
「新鮮さより高級感を演出したい」ギフト商品などに限定される傾向があります。
理由④:衛生確認・異物検査がしやすい
白は異物の発見に非常に適した色です。
製造ラインや店頭でのチェック時に、
髪の毛・カビ・金属片などが即座に目視で判別できるため、
食品衛生法上も安全確認が容易な色とされています。
また、消費者が購入後に家庭で開封するときも、
「容器がきれい=中身も清潔そう」という安心感を自然に抱かせます。
この心理効果が、白の継続採用を後押ししているのです。
理由⑤:リサイクル工程でも扱いやすい
リサイクルの観点でも、白は理想的な色です。
色付きトレーは再生時に色混ざりで灰色化しやすい一方、
白トレーは再利用しても品質が安定します。
再生PS樹脂を他製品に転用しやすいため、
環境配慮を重視するメーカーも白を基準色として回収・再利用しています。
一方で、黒・金・透明が使われるケースもある
もちろん、すべてのトレーが白とは限りません。
高級惣菜やステーキ肉などでは、
- 黒トレー:高級感・重量感を演出
- 金トレー:贈答・正月など特別感の演出
- 透明トレー:デザート・サラダなどの視覚的魅力重視
といったように、販売戦略や商品の価格帯によって色が使い分けられています。
つまり「白=標準」「黒・金=演出」という棲み分けができているのです。
まとめ:白は“清潔・安価・万能”という合理的選択
食品トレーが白いのは、
- 清潔で衛生的に見える
- どんな食材も映える万能色
- コストが低く量産に適する
- 異物確認やリサイクルが容易
 といった見た目と実用性の両立によるものです。
つまり、白トレーは「無難」ではなく、
最も科学的で経済的な“正解色”。
毎日の買い物で当たり前に見えるその白には、
食品流通を支える合理設計の知恵が詰まっているのです。

 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											