【R-CPD治療体験記】げっぷができない病気の検査・ボトックス注射・費用・治療後の経過
みなさんは、次のような症状に悩んでいませんか。
・げっぷがほとんど出ない
・食後にお腹が大きく張る
・喉や胸からゴロゴロと音が鳴る
・吐き気がする
・おならが多い
・炭酸飲料や飲酒で症状が悪化する
私も生まれつきげっぷがほとんどできず、食後の吐き気や腹部膨満、喉のゴロゴロ音、放屁の多さに悩まされていました。
病院を受診しても精神的なものだと言われたり、呑気症と診断されたりしましたが、ある日、YouTubeのコメント欄で「R-CPD」という病気を知りました。
調べてみると、自分の症状がR-CPDの特徴とほぼ一致していたため、日本医科大学付属病院で検査を受け、その後、あそか病院でボトックス注射による治療を受けました。
この記事では、R-CPDとはどのような病気なのか、病院の予約から検査、治療、費用、治療後の経過まで、実際の流れに沿って紹介します。
R-CPDとは
R-CPDは「Retrograde Cricopharyngeal Dysfunction」の略称で、日本語では逆行性輪状咽頭筋機能不全と呼ばれます。
海外では「No Burp Syndrome」と呼ばれることもあり、簡単に言えば、げっぷとして空気を口から出すことが難しい病気です。
食道の上部には、輪状咽頭筋という筋肉があります。この筋肉は通常、食べ物や飲み物を飲み込むときや、胃や食道にたまった空気をげっぷとして出すときに緩みます。
R-CPDでは、空気が胃や食道から喉の方向へ戻ってきても、輪状咽頭筋が適切に緩みません。そのため、空気をげっぷとして口から排出できず、食道や胃、腸に空気がたまります。
その結果、腹部膨満、胸や喉のゴロゴロ音、胸の圧迫感、吐き気、過剰な放屁などが起こると考えられています。
R-CPDの主な治療として行われるのが、輪状咽頭筋へのボツリヌス毒素注射、いわゆるボトックス注射です。
ボトックスには、神経から筋肉へ収縮の指令が伝わるのを一時的に抑え、筋肉の緊張を弱める作用があります。R-CPDでは輪状咽頭筋にボトックスを注射することで、げっぷの際に筋肉が緩みやすくなり、胃や食道にたまった空気を口から排出できるようになります。
R-CPDは、2019年に症状や治療法が体系的に報告された比較的新しい疾患概念です。以前から同じような症状に悩む人はいたと考えられますが、現在でも一般的な認知度はそれほど高くありません。
そのため、腹部膨満や放屁の多さだけを伝えると、呑気症や胃腸の不調、精神的な問題など、別の原因を疑われることがあります。
R-CPDの主な症状
R-CPDでよく見られる症状は、げっぷができないことだけではありません。
代表的な症状には、次のようなものがあります。
・まったくげっぷができない、またはごく稀にしか出ない
・食後に喉や胸からゴロゴロ音が鳴る
・食後にお腹が大きく膨らむ、吐き気がする
・胸が圧迫されるように苦しくなる
・おならの回数が非常に多い
・炭酸飲料、飲酒、満腹時に症状が悪化する
・夕方になるほど腹部膨満が強くなる
私の場合も、生まれつきげっぷがほとんどできず、母親によると授乳後もげっぷをしていなかったそうです。食事をするとお腹が張り、胸や喉からゴロゴロ音が鳴り、夕方になるほど症状が悪化していました。
食後は横にならなければ耐えられないことも多く、仕事前や外出前には食事を避け、最終的には夜にまとめて食べる1日1食に近い生活になっていました。また、げっぷとして出せなかった空気がおならになるため、仕事中や外出中に放屁を我慢することも大きな負担でした。
R-CPDと呑気症などの違い
R-CPDは、呑気症や胃腸の不調と症状が似ているため、別の病気と診断されることがあります。
呑気症は、無意識に空気を多く飲み込むことで、げっぷ、腹部膨満、放屁などが起こる状態です。
一方、R-CPDは、飲み込んだ空気の量ではなく、体内に入った空気をげっぷとして出せないことが主な問題です。
私も以前、呑気症と診断され、消化管運動を改善するモサプリドを処方されましたが、症状はほとんど改善しませんでした。
また、R-CPDは一般的な嚥下障害とも異なります。
R-CPDでは、食べ物を口から胃へ送る動きに大きな問題がなくても、胃や食道から上がってきた空気を口から出す動きだけがうまく働かない場合があります。
ただし、症状だけでR-CPDと判断することはできません。腹部膨満や胸の不快感はほかの病気でも起こるため、専門の医療機関で診察を受ける必要があります。
R-CPDで受診する病院と予約方法
私が受診した2026年5月時点では、国内でR-CPDのボトックス治療を受けたい場合、あそか病院の青柳陽一郎先生の下でしか治療が受けられませんでした。
ただし、すぐにあそか病院で注射を受けられるわけではありません。
治療の前に、R-CPDの可能性やボトックス注射の適応を判断するための検査が必要です。この検査は日本医科大学付属病院で行われます。(担当医は同じく青柳陽一郎先生)
日本医科大学付属病院のリハビリテーション科では、R-CPDに対して、嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査などを用いた評価と、治療方法の提案を行っています。
あそか病院では、問診や検査結果をもとに適応を判断し、輪状咽頭筋へのボツリヌス毒素注射(ボトックス注射)を行っています。
つまり、私が実際に受診した順番は次のとおりです。
日本医科大学付属病院に電話して初診と検査を予約する
↓
日本医科大学付属病院で問診と検査を受ける
↓
R-CPDの可能性とボトックス注射の適応を判断してもらう
↓
あそか病院に電話してボトックス注射の予約を取る
↓
あそか病院でボトックス注射を受ける
予約は電話で行いました。
電話で一から症状やR-CPDについて詳しく説明しようとすると、何と伝えればよいか迷うかもしれません。
私の場合は、日本医科大学付属病院に電話して「青柳先生のボトックス注射について受診したい」と伝えたところ、それだけで内容が通じました。
「R-CPDという病気の検査を受けたい」と長く説明するよりも、「青柳先生のボトックス注射」と伝えた方が、担当部署へ話がつながりやすいと思います。
私が電話した時点では、最短の初診日が約1か月後でした。現在は受診者数の増加によりさらに予約が取りづらくなっているようです。
ここからは、私が日本医科大学付属病院で検査を受け、あそか病院でボトックス注射を受けた際の実際の流れを紹介します。
初診とR-CPDの検査内容
初診は2026年4月中旬に受けました。
最初に約15分の問診があり、次のような内容を聞かれました。
・げっぷができるか
・いつからげっぷができないか
・食後に喉や胸が鳴るか
・腹部膨満があるか
・おならが多いか
・炭酸飲料や飲酒で症状が悪化するか
・家族に同じような症状があるか
問診後は、R-CPDの仕組み、検査方法、ボトックス注射による治療について説明を受けました。
私が受けた検査は次のとおりです。
・嚥下造影検査
・嚥下内視鏡検査
・レントゲン撮影
検査前の食事制限はありませんでした。
検査では、バリウムで白く着色した炭酸水を何度か飲み、その際に食道内の空気や喉の動きをレントゲンで確認しました。
炭酸水を飲んで空気を発生させ、空気が喉の方向へ上がってきたときに輪状咽頭筋がどのように動くかを、医師が画面上で注意深く観察していました。
鼻から内視鏡を入れる検査は少し苦しかったものの、耐えられる程度でした。それ以外の検査にはほとんど痛みがありませんでした。
検査時間は約15分で、問診と待ち時間を含めた滞在時間は約90分でした。
検査後は「おそらくR-CPDだろう」と説明され、輪状咽頭筋へのボトックス注射を勧められました。
医師の説明は非常に丁寧でした。
過去に症状を精神的なものではないかと言われた経験があったため、最初からR-CPDの可能性を前提として症状を確認してもらえたことには安心感がありました。
治療当日の流れ
2026年5月下旬に、あそか病院でボトックス注射を受けました。
治療は日帰りで、全身麻酔ではなく局所麻酔でした。
治療当日も食事制限はありませんでした。
最初に治療方法と副作用の説明を受け、その後、ベッドに仰向けになって治療を受けました。
首の表面に麻酔クリームを塗った後、首の左右に局所麻酔の注射を行いました。
その後、超音波と筋電図で筋肉の位置を確認しながら、首の左側、中央、右側からボツリヌス毒素を注射しました。
私が受けたボトックス注入量は次のとおりです。
左側:45単位
中央:5単位
右側:30単位
合計:80単位
治療時間は約20分でした。
首への注射は、麻酔をしていてもかなり痛く、恐怖感もありました。
腕への採血や予防接種とは異なり、喉に近い部分へ複数回針を刺します。針が首の奥に入っていくような独特の感覚があり、治療中はかなり緊張しました。
ただし、治療そのものは短時間で終了し、すぐに帰ることができました。
R-CPDの治療費用
私が実際に支払った費用は次のとおりです。
日本医科大学付属病院の初診・検査:11,350円
あそか病院のボトックス注射:199,900円
1か月後のフォローアップ診察:3,300円
日本医科大学付属病院で受けた診察と検査は保険適用でしたが、紹介状なしで受診したため選定療養費(7,000円)が発生しました。
あそか病院で受けたボトックス注射とフォローアップは、全額自費診療でした。
ボトックス治療後の経過
治療当日は、首の注射部位に内出血ができました。見た目はキスマークのような赤紫色でした。
治療翌日には、自然に初めてのげっぷが出ました。
最初は出し方のコツが分からず、空気を完全には出し切れませんでしたが、空気が口から抜けた瞬間に、お腹が一気に軽くなりました。
これまで感じたことがないほどすっきりし、「ずっと欲していたのはこの感覚だったのか」と思いました。
治療から2~3日後にはげっぷの回数が増えましたが、同時に食べ物を飲み込みにくくなりました。
固形物が引っかかる感覚があったため、水で流し込みながら食べていました。
1週間後には、げっぷの出し方をほぼマスターできましたが、飲み込みにくさはまだ残っていました。
約2週間後には、飲み込みにくさもほぼ改善しました。
治療直後には、少し声を出しづらい感覚や、食後すぐ横になったときに胃酸が逆流するような感覚もありました。
しかし、1か月後には副作用がほぼなくなり、げっぷも全く問題なく出せる状態になりました。
治療後に改善した症状
治療後は、次の症状がほぼなくなりました。
・食後の腹部膨満
・喉や胸のゴロゴロ音
・胸の圧迫感
・過剰な放屁
・食後の吐き気や苦しさ
炭酸飲料も普通に飲めるようになりました。
治療前は、炭酸飲料を飲むと大量の空気が体内にたまり、腹部膨満や胸の圧迫感が強くなるため、できるだけ避けていました。
現在は、炭酸飲料を飲んでも、その空気をげっぷとして外に出せます。
また、仕事前や外出前でも、好きなタイミングで食事ができるようになりました。
治療前は食後に横になる必要があり、1日1食に近い生活をしていましたが、現在は食事の時間を気にする必要がありません。
げっぷが出るようになっただけでなく、食事や外出の予定を症状に合わせなくてよくなったことが、最も大きな変化でした。
R-CPDの治療を受けるか迷っている人へ
私は25歳でR-CPDの治療を受けました。
これまでの25年間を振り返っても、R-CPDが治ったことが人生で一番うれしかった出来事だと感じています。
治療前は、食事をするたびにお腹が張り、喉や胸が鳴り、おならを我慢し、食後は横にならなければ耐えられないこともありました。それが当たり前の生活だったため、治療を受けるまでは、自分がどれほどR-CPDに行動を制限されていたのかにも気づけていませんでした。
治療後は、食べたいときに食べ、仕事や外出の予定を気にせず、炭酸飲料や外食も楽しめるようになりました。普通に食事をして、たまった空気をげっぷとして出せるだけで、これほど生活が楽になるとは思っていませんでした。
もちろん、治療には約20万円かかり、首への注射には痛みや恐怖もあります。治療後には、約2週間にわたって食べ物を飲み込みにくい時期もありました。
それでも、治療前に戻ったとしても、私は迷わずもう一度治療を受けます。
R-CPDの治療を受けるか迷っている人は、費用や副作用だけでなく、現在の症状によって失っているものについても考えてみてください。
食事のたびに苦しくなる、外食や会食を避けている、仕事中におならを我慢している、食後の予定を立てられない。そのような生活が続いているのであれば、一度専門の医療機関へ相談する価値は十分にあります。
必ず治療を受けると決めてから受診する必要はありません。まずは検査を受け、自分の症状がR-CPDに当てはまるのか、どのような治療が可能なのかを医師に確認するところから始められます。
私にとってR-CPDの治療は、単にげっぷができるようになるための治療ではなく、食事や外出を自由に楽しめる生活を取り戻すための治療でした。
医療情報に関する注意事項
この記事は、筆者が2026年に実際に受けた検査と治療の体験をもとに作成しています。
検査内容、治療方法、効果、副作用、費用、保険適用の扱いは、患者の状態や医療機関、受診時期によって異なります。
また、腹部膨満、胸部不快感、吐き気、嚥下の違和感などは、R-CPD以外の病気でも起こります。
この記事は診断や治療を目的とするものではありません。症状がある場合は、医療機関へ相談してください。