結論から言うと、先に生まれたのは大文字です。古代ローマの碑文を見ると、当時のアルファベットには大文字しかなかったことがわかります。
8世紀後半頃になると、ようやく小文字が登場します。
8世紀後半は文芸運動が盛り上がり始めた時期で、それまでよりも多く本が出回るようになりました。本を作るには、当然書くものが要ります。しかし、当時のヨーロッパには、まだ製紙法が伝えられていませんでした。
そこで紙の代わりに利用されていたのが、動物の皮をなめした羊皮紙です。羊皮紙は高価だったので、節約のために文字を詰めて書く必要がありました。
ここで考案されたのが小文字です。
当時の文芸の担い手の中核は、聖書や古典を書き写す修道僧たちでした。一口に「小文字」といっても、その様式は修道院ごとにまちまちであり、字体の統一が急がれました。
そんな中で活躍したのがイギリス生まれの神学者・アルクインです。彼は小文字の統一事業に尽力し、「カロリング小字体」と呼ばれる字体を確立しました。これが基礎となり、現在知られているアルファベットの小文字表記へと発展していきました。